夜明けまえ

 

ぶるりと肩が震え、

無意識に温もりを求めると、

すぐ隣りから、温かな温もりを感じ、

すりすりと身体を寄せる。

 

聞こえてきた規則正しい心音が心地良く、

うつらうつらと、再度、眠りに落ちかけた

その瞬間、

不意に昨夜の事を思い出し、

眠り掛けていた脳が、くっきりはっきりと

覚醒した。

 

昨夜は、新年を迎える宴で、

大いに食べ、飲んで、大騒ぎした。

何時も以上の酒量に、

したたかに酔い、

自ら奴の身体の上に、乗っかり、

淫らに喘ぎ求めた・・・。

 

その上、

 

今まで告げた事のない

本音を、言ってしまった・・・

 

最悪だ。

 

覚えていなければ、

このまま今の関係を

素知らぬ顔で続けられたのに・・・

 

肌に馴染んだ温もり、

心地良い心音を

何時かは手放さなければならないと

覚悟はしていたけれど、

こんな突然に・・・

 

「あ」

 

自然と唇から、声が漏れた。

もうここは自分の場所じゃないと、

判っているのに、離れ難い。

 

それでも、なんとか触れたままの肌を離した瞬間、

太い腕に引き寄せられる。

 

「寒い」

 

不機嫌な声と共に、さらに強く抱き寄せられる。

 

「だから、今、毛布かなんか・・・」

「お前がいたらいい」

 

逃げる口実は、あっさりと却下された。

 

「昨日、言った事・・・本気か?」

 

聞こえた言葉に、血の気が退く。

 

「酔っぱらいの、戯れ言か?」

 

続けられた言葉は、未だ瞼を閉じたままで、

その真意が読めない。

 

「・・・気色、悪いだろう?俺、男にあんな言葉

言われても・・・」

「ああ。気色悪いな。お前からあんな言葉言われるなんて、

想像もした事、なかったからな」

「だったら忘れろ。」

「気色悪かったから、あれがお前の本気の言葉なら、

素面でもういっぺん聞かせろ」

 

規則正しく聞こえていた心音が、

少しその律動を速くした様に感じる。

 

瞼を開き、俺をみつめるその瞳の色が、

泣きたくなるほど優しい色に見え、

言えなかった言葉を、

不本意に告げた言葉を

静かに夜明が明ける前に

もういちどだけ・・・

 

 

 

End

 


2014年1月4日 やぎの誕生日にいただいたお話です。

素敵ですね〜

体先行のサンジの葛藤って大好き!その末の幸せになる瞬間ですよ、たまらん!

翼さんありがとうございました!