『予習』

肉売り場でサンジは難しい顔で考えこんでいた。

手にしたそれをジッと見つめもうたっぷり3分は固まっている。

はたからはメニューで悩んでいる様に見えるのだろう。

でも、実際は違う。

頭の中でこんな淫らな事を考えてフリーズしてるなんて、まさか周囲は思わないだろう。

 

ひょんな事からあいつと抜き合う仲になってしまった。

 あいつにとっては単純にただの処理なんだろうなと考えると胸が痛んだが、好きな奴に触れられ、あいつが気持ちよくなるならまあいいかと、俺も誘いにのった。

なのに一昨日突然「惚れてる。お前とヤリたい。」だなんて言って来やがった。

「え?それって俺が突っ込まれる方って事?お前のそのぶっといヤツ?ってか今なんて言った?ヤリたいの前。」

 「惚れてるって言ったんだ。」

 そういうと、熱のこもった眼で俺を見つめて抱き寄せ、そのまま口付て来た。

何が起こってるのかわからない俺はされるがまま、思わず唇を薄く開く。

こいつとキスするなんて初めてだ。

髪を梳きながら愛しげに何度も何度も繰り返されるそれに、夢でも見てるのかな?俺に都合のいい。

夢なら流されてもいいかな…。と思った時こいつの唇がゆっくりと離れた。

「急に言われても困るだろ。だからまだ今日はいい。そうしてもいいと思えるまで待つ。」

そういうとあいつはキスで再び兆してしまった俺のを初めて口に含んだ。

「ちょ…なにすんだ、んなとこ…あぁ…マジやめてくれ、出ちまう。」

予想外の行動と突然の刺激に無様にも俺は呆気なく達してしまい。ヤツはそれを飲み下した。

「惚れてる奴を気持ちよくさせてやりたかったんだ。悪いか?」

それならお前にも、と兆すどころでは無いヤツの昂まりに手を伸ばした瞬間 、ヤツは腰を引いた。

「しなくていい。今されたら俺は止まれる自信が無い。……サンジ、俺はお前に本気で惚れてる。お前が女好きでも、なんでもだ。お前が心毎応えてくれるんでなきゃダメだ。だから抜き合いもやめだ。」

 

心毎なんて、最初からお前に持ってかれてるよ。

ただ、ビックリしたんだ。

お前が突然告るから。そんな事あり得ない。

俺の片思いだと思ってたから。

抱きたいってつまりアレを俺のケツにってことだよな。

好きな奴の為ならとは思うけど、正直怖いな。

だってあいつのこれ位余裕であったぞ。

 

「…それ、春キャベツやアスパラなんかの春野菜と卵で炒めると、とても美味しいですよ。彩りもいいですし。」

ボロニアソーセージを手にして逡巡していると、店員さんが声をかけてきたので、漸く俺は我に返った。

 

「そ、そうですねマダム、じゃ、試しに作ってみようかな。は、ははは…。」

考えていた事と、食材に対してそんな妄想を抱いてしまった羞恥心から真っ赤になった俺は、慌ててそれをカゴにいれ、怪訝そうな表情の彼女を残し、まだ途中の買い物の支払いを済ませ逃げる様に店を出た。

あいつに告られて、求められて、頭がいっぱいになっちまうなんて。

どこの乙女だよ俺。

本気で告ってきたあいつに、応えてやりたい気持ちはある。

俺が受け入れる方になるなんて、そんな仲になるなんて考えてもみた事がなかったから、やっぱり躊躇いがある。

それに俺の身体はどっから見ても男だ。

髭もすね毛もあるし、声は低いし 胸もないし、受け入れる潤んだアソコだってない。

深夜、タバコを燻らしながら一人で逡巡していると、ふと、イケナイ考えが浮かんでしまった。

試しにさっきので練習してみようか。

いやいやいや。

食材だぞ、断じてそんな事してはダメだ。

 

でも、こんなに練習にぴったりのものはない。

口で咥えてみるだけなら…。

そっと含んでみる。

 

「おまっ…なにやってんだ?」

 

突然開いた扉からあいつが唖然としてソーセージを咥えたまま固まる俺を見つめる。

「なんてエロいツラしてんだ。襲いたくなっちまうだろうが。」

切ない表情のあいつが、俺の口からソーセージをはずして、口付ける。

「折角俺が我慢してるのに、お前は…。」

 

「が、我慢するなよ。」

消え入りそうな声でやっと言うと、あいつは眼を大きく見開いた。

「今なんて?…それは、いい返事と受け取っていいのか?」

「ああ、俺も…お前が…好きだ。でなきゃ抜き合いなんてしてねぇよ。けど、お、俺だって男だ。突っ込まれるのは抵抗無いっつたら嘘になる。」

 

「そうか、そうだよな。お前も男だ、立場は同じだ、なんならお前が突っ込むか?」

「いやいやいや、それ以前に俺はレディじゃねぇ。ガキだって産めねえし…」

「そんな事関係ネェ。お前がいいんだ。お前じゃなきゃダメなんだ。どっちが突っ込むかはこれから決めても、なんなら交代でも……。」

 「は、恥ずかしい事、言うなあああ!」

ドゴーン!

物凄い勢いで蹴り飛ばされたゾロだったが、サッと起き上がるとサンジに駆け寄り抱きしめながら、耳元で囁く。

「ずっと大事にする。お前も同じ気持ちなら、もう焦る必要はねェ。二人でゆっくり進めばイイ。」

あぁ、嬉しくてもう泣きそうだ。

 

何なら、ロビンやチョッパーに相談しても、と言ったあいつを再び蹴り飛ばす。

そしてテーブルのボロニアソーセージをみて思った。

これからも練習に必要になるのかな。 ま、賞味期限長いしな。

これの期限切れる前に、俺も処女か童貞喪失するのかな? 俺は赤面してタバコを燻らした。

 

わぬちゃんからすっごいのいただきました!

さぁ、この後この二人はどっちに進むのぉ?