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ゴツゴツした小さな粒をテーブルに並べて、サンジが考え込んでいる。
サンジが持っているということは食材なんだろうが、ちょっと異様な風体だ。
枝がついているのもあるから果実らしいが、堅そうな殻はウロコが重なっているようなグロテスクな見た目。全体的に毒々しい赤みにちらりちらりと青い斑が浮いている。はっきり言えば、気持ち悪い。
「なんだそりゃ?」
「ライチだと思うんだけどなぁ?」
なんだろうなぁ?というような顔に力が抜ける。
おまえが採ってきたんじゃねえのかよ。
「違うのか?」
「うーん…」と唸りながら、サンジが固そうな殻に爪を立てると、外見と違って案外簡単に、ツルリとした乳白色の丸い果実が剥き出しになった。
ジューシーな果汁が手に流れるのを舌を伸ばしてツッと舐めると、「うううーんん?」と更に不可解な顔で首をひねっている。
「ライチってなぁ、保存が効かなくて、冷凍して茶色くなったもんしか見たことねえんだけど、元は赤いって話は聞いてんだ。けど、元は甘味がねえなんてのは聞いたこと無いんだよなー。」
「甘くねえのか。」
「甘味どころか、無味無臭。なんの味もしねえ。」
そう言いながら、取り出したペディナイフで薄く果実を切り取ると、チュルンと口に入れる。
「おい!大丈夫なのかよ!」
「大概のもんなら耐性つけてある。が、やーっぱ、味しねえなぁ。」
あっけらかんと何ともしれないものを口にするコックに腹が立つ。
本人は、そんなこと露とも知らず、他の実も皮をむいて匂いを嗅いでみたり、冷凍してみるかと呟いて冷凍庫に数個放り込んでいる。
その時、船に近づくひとりの気配を感じる。
「おい、チョッパーに見せたらどうだ。」
「あいつの船番明後日じゃねえか・・・・・・あ、戻ってきたな。」
「おう。」
「よし、呼んでこい!マリモ剣士!」
「なんで、おれが!」
「おれは鹿のココア入れてやんの。呼びに行く位できんだろ?」
「ったく。こき使いやがって・・・!」
チョッパーを連れてキッチンに戻ると、コックはご大層にエプロンをしていた。
テーブルの上の果実を見ると顔を輝かせながらも、ココアをまず口にするあたり餌付けが利いている。
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「これはライチの亜種だよ。毒じゃないけど食用には向かない。赤くなってるのは鎮痛剤になるからもらっていいか?」
チョッパーの言葉におれはガックリと肩を落とした。
「そうなのか。ああ、食いもんにならないなら、用はねえ。持ってってくれ。」
チョッパーはいそいそと赤い実を選るとリュックに入れて立ち上がった。
「そっちのはまだ鎮痛、鎮静効果に変化してないから捨てた方がいいぞ。」
「変化?」
「うん。興奮源が熟すことで変化するんだ。血行促進や勃起不全にはそっちを使うんだけど、この船にはいらねーからな。」
「ぼ……」
「あ!おれ、また山に行くけど、一緒に行くか?」
「いや、今日はやめとくぜ。美味そうなもんあったら採ってきてくれ。」
「うん!じゃ、ウソップが図鑑待ってるから、行くな!」
「おう。気をつけろよ。」
おれはその場でチョッパーを見送り、ひらひらと手を振る。
あーぁ、なるほどね。
さて、この藻をどうやって追い出すか。
「ほーお、なるほどね。」
頭上から響いた声に振り向く間もなく、仰向かせられ、そのまま口を塞がれる。
強引な舌は噛み締めた前歯も難なく割り、咥内へと侵入を果たした。
上下が逆になっている口づけはうまく舌も絡まず、ただ蹂躙するばかり。
頬の裏をつつかれ、舌の根を吸われ、焦れったさに肩を叩くと、合わせた唇が笑みを刻んだ気がした。
そのとき、ゾロの舌に乗っていたのは柔らかい果実。
いつの間に食いやがった!
離そうとした口は元より、頬と顎をガシッと掴まれビクともしない。
ソレは喉の奥まで差し込まれ、ヒュッと体内へ落ちていった。
ようやく解放された唇から、はぁはぁと新鮮な空気を取り込む。
「バカやろう、てめぇまで食いやがって……」
テーブルに突っ伏して睨みつけるがどこ吹く風。
「問題ねぇな。」
「しねぇぞ!こんな真っ昼間から!水でも浴びて治めてきやがれ!」
「てめぇはどうすんだ?一人でマスかくのか?」
フフンと鼻で笑ったゾロはエプロンで隠しているそこを的確につつく。
「こんなになってんのに、一人で治められるのかよ。」
その手を振り払い、くるりとイスを回して正面から噛みついてやる。
「みんな上陸してんだぞ!?おまえ、船番だろうが!」
「それのどこが問題だ。声出そうが、揺れようがあいつらにわかんねーってこったろ。しかも、おれとおまえだ。たとえ真っ最中だろうが、敵襲に気づかねえ訳ねえな。」
「倫理上の問題だ。」
「は!今更だな。」
「もう…!しらねーぞ。てめぇ敵が来たらフルチンで向かえよ?おれは行かねーぞ。」
手慰みに摘まんでいた青いライチもどきの皮を剥く。
「行けねーの間違いだろ。」
「けっ!」
言葉尻をとらえるゾロを横目で見やりながら、その果実にチュッと音を立てて口づけた。
「行けねー位ぇにしてみろよ。」
ゾロはその果実ごと食らいついてきた。
あちらの咥内、こちらの咥内と行き来するうち、果実が剥がれ種が剥き出しになる。
ゾロの頬をペチペチと叩いて口を離すと、くそまりもは種を咀嚼する寸前だった。
「あほ。種出せ。固ぇだろうが。さっきのは、まさか食ったのか?」
「おう。種も味無かったぞ。」
「ほんと、信じらんねーバカ。」
「うっせ。」
クスクス笑っているうちに、シャツのボタンは外され、スーッと風が肌を撫でていく。
「んんっ!」
コロコロとパンを丸めるように、種を胸に押し当てられ、固い感触が立ち上がった乳首を押し潰す。
「ちょっと待ってろ。」
そう言ってゾロが立ち上がった間に、ハンパになった衣服を脱ぐ。
油を取りに行ったんだろうに、冷蔵庫を開けている音がする。
なにやってんだ、あのバカ。そんなとこに入れねぇよ。
首を伸ばして指示しようと見ると、油の瓶を持って戻って来るところだった。