慟哭Z 2

サンジの気配に目が覚める。

昼間に逃したっきり、目を合わすことも叶わないまま、夕飯を摂り、鍛錬をし、一眠りした半日後のことだった。

おれは、慎重に寝たふりを続ける。

 

よくあることだった。

サンジは毎晩のように魘されている。

起こしてやろうか、悪夢にまみれた睡眠でも取れた方がいいのだろうか、おれが決まってそれを迷った頃、悲鳴とともに起き上がる。

小さな溜め息が聞こえたあと、ハンモックがギシギシと軋み、おれのハンモックを見下ろすサンジ。

頬であったり、腕であったり、体温を感じるほど近くにまで伸びてくる手は、絶対おれに触れないから。

 

おれは慎重に寝たふりを続けるしかなくて…。

 

話を聞いて欲しいのか

何も聞かずに抱き締めてやればいいのか

 

決め兼ねているうちに、いつもなら離れていくサンジの気配が、今日はぐっと近くなり、目蓋に息がかかる。

頬に押し当てられた柔らかい感触は、手じゃなくて

獲物を捕食するイソギンチャクのように迅速に、おれはサンジを寝床に引き込んだ。

「うっわ!」

「夜這いか?歓迎するぜ。」

「ば!!ばか!違う!!」

「アホ、声落とせ。」

「!!っ!」

慌てて、自身の両手でおさえたサンジの口から、ふぶっと息が漏れたのが子供のようで、おれは肩を揺らして笑ってしまう。

「笑うな、クソ。」

「はいはい。」

上体を引き込まれただけのサンジを引っ張り上げ、抱えなおす。

とくに抵抗もしないが、胸に置かれただけの手が背中に回ればいいのに、と思って強く抱き締めた。

「ん、なに?」

「なんでもねえ。イイ匂いだ。」

頭のてっぺんに鼻を埋めると、なんだか甘い匂いがした。

「えー?煙草の匂いしかしねえだろ?」

そう言いながら、お返しのようにおれの首にサンジの鼻があたる。

ああ、こんなに近くにいるのは久しぶりだ。

こんな子供みたいな接触も悪くない。

「てめえ、また風呂入ってねえだろ。汗くせぇよ。汗と鉄の匂い……。」

汗くさいと言うから嫌がるのかと思って、足の間にサンジの足を挟んで逃げられないようにするが、その気はないらしく、顔も離れていかない。

それどころか、どうも足の間に熱を感じ、あたっているような……。

慎重に足を動かし、サンジの股間が昂ぶっていることを探ろうとすると、一瞬前に気付いたサンジが飛び退いた。

そのままハンモックから飛び降りたサンジの腕を取り、おれもハンモックから降りる。

 

「そんなに、何度も逃げるな。てめえがイヤなことはしねえから。」

「違う、気付いたろ?軽蔑しねえ?」

「軽蔑するようなことしてたか?」

「だって……勃っちゃった……。」

「おれの匂いで興奮したのか。」

こくんと頷くサンジを改めてソファに押し倒す。

「エッチなことしたくないっておれが言ったのに、こんなことでしたくなっちゃうなんて、みっともねえだろ。おれ淫乱になっちまったのかな。」

あんなことしてたから……言葉にはなってなくても、そう自分を責めているような気がした。

「みっともねえか?おれは嬉しいぞ。誰彼構わずじゃねえんだろ?」

「てめえ以外の誰に、こんな…!」

「欲情しねえ?」

おれの胸に顔を埋めて、再びこくんと頷く。つむじまで赤くなっている。

 

普段はチンピラみてえなのに、なんでこんなにかわいいんだろうな。

「軽蔑なんてしねえから、ちょっとおとなしくしとけよ。抜いてやる。」

「え、いい!いらね!」

前立てを開けると、下着が中からグンと持ち上がる。

「これじゃ、つれえだろ。最後までしねえから。な、おまえを良くしてやりてえだけだ。」

下着の上から、撫でるとサンジが息を飲んだ。

 

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