サンジの気配に目が覚める。
昼間に逃したっきり、目を合わすことも叶わないまま、夕飯を摂り、鍛錬をし、一眠りした半日後のことだった。
おれは、慎重に寝たふりを続ける。
よくあることだった。
サンジは毎晩のように魘されている。
起こしてやろうか、悪夢にまみれた睡眠でも取れた方がいいのだろうか、おれが決まってそれを迷った頃、悲鳴とともに起き上がる。
小さな溜め息が聞こえたあと、ハンモックがギシギシと軋み、おれのハンモックを見下ろすサンジ。
頬であったり、腕であったり、体温を感じるほど近くにまで伸びてくる手は、絶対おれに触れないから。
おれは慎重に寝たふりを続けるしかなくて…。
話を聞いて欲しいのか
何も聞かずに抱き締めてやればいいのか
決め兼ねているうちに、いつもなら離れていくサンジの気配が、今日はぐっと近くなり、目蓋に息がかかる。
頬に押し当てられた柔らかい感触は、手じゃなくて
獲物を捕食するイソギンチャクのように迅速に、おれはサンジを寝床に引き込んだ。
「うっわ!」
「夜這いか?歓迎するぜ。」
「ば!!ばか!違う!!」
「アホ、声落とせ。」
「!!っ!」
慌てて、自身の両手でおさえたサンジの口から、ふぶっと息が漏れたのが子供のようで、おれは肩を揺らして笑ってしまう。
「笑うな、クソ。」
「はいはい。」
上体を引き込まれただけのサンジを引っ張り上げ、抱えなおす。
とくに抵抗もしないが、胸に置かれただけの手が背中に回ればいいのに、と思って強く抱き締めた。
「ん、なに?」
「なんでもねえ。イイ匂いだ。」
頭のてっぺんに鼻を埋めると、なんだか甘い匂いがした。
「えー?煙草の匂いしかしねえだろ?」
そう言いながら、お返しのようにおれの首にサンジの鼻があたる。
ああ、こんなに近くにいるのは久しぶりだ。
こんな子供みたいな接触も悪くない。
「てめえ、また風呂入ってねえだろ。汗くせぇよ。汗と鉄の匂い……。」
汗くさいと言うから嫌がるのかと思って、足の間にサンジの足を挟んで逃げられないようにするが、その気はないらしく、顔も離れていかない。
それどころか、どうも足の間に熱を感じ、あたっているような……。
慎重に足を動かし、サンジの股間が昂ぶっていることを探ろうとすると、一瞬前に気付いたサンジが飛び退いた。
そのままハンモックから飛び降りたサンジの腕を取り、おれもハンモックから降りる。
「そんなに、何度も逃げるな。てめえがイヤなことはしねえから。」
「違う、気付いたろ?軽蔑しねえ?」
「軽蔑するようなことしてたか?」
「だって……勃っちゃった……。」
「おれの匂いで興奮したのか。」
こくんと頷くサンジを改めてソファに押し倒す。
「エッチなことしたくないっておれが言ったのに、こんなことでしたくなっちゃうなんて、みっともねえだろ。おれ淫乱になっちまったのかな。」
あんなことしてたから……言葉にはなってなくても、そう自分を責めているような気がした。
「みっともねえか?おれは嬉しいぞ。誰彼構わずじゃねえんだろ?」
「てめえ以外の誰に、こんな…!」
「欲情しねえ?」
おれの胸に顔を埋めて、再びこくんと頷く。つむじまで赤くなっている。
普段はチンピラみてえなのに、なんでこんなにかわいいんだろうな。
「軽蔑なんてしねえから、ちょっとおとなしくしとけよ。抜いてやる。」
「え、いい!いらね!」
前立てを開けると、下着が中からグンと持ち上がる。
「これじゃ、つれえだろ。最後までしねえから。な、おまえを良くしてやりてえだけだ。」
下着の上から、撫でるとサンジが息を飲んだ。