日常発 楽園行き

 

「うっわ、なんだコレ。ジャングル?てめぇ、保護色で見失っちまうなぁ!!」

「おい」

「お、こっちは女の子喜びそう~ロマンティックで良いんじゃねー?」

緑と黄色い頭の背後から、無粋な咳払いが聞こえた。

「君たちが遊びに来る場所じゃないよ!学校はどこだね!?」

 

振り向かず、色とりどりのパネルの前から飛び出した二人はひとしきり、そのまま走り続けた。

 

ほとぼりが冷めた頃、顔を見合わせ、プッと笑い合う。

「やっぱり、制服じゃダメかぁ~」

「てめぇが騒ぐからだろ。」

「着替えに帰ってたら安い時間終わっちまうしな~」

「聞けって。」

「家のそばってわけにゃいかねーしなぁ。…あ…」

マイペースに喋っていたサンジがふと口を噤む。

その視線の先を追ったゾロがサンジの腕を掴んだ。

 

「てめぇ、黙っとけよ。空いてる部屋適当に取るぞ。どんな部屋でも文句言うなよ。」

ズンズンと歩き出すゾロに引き摺られながら、サンジの腰が引けてゆく。

「もう、いいよ。帰ろうぜ。なんか古そうな建物だし…」

「どこも変わらん。」

ゾロは腕に力を込めた。

 

 

発端はほんの数時間前、昼休みのことだった。

「ゾロ!おまえさ!ラブホテル行ったことある?

てめぇ、遊んでたもんな!行きまくってんだろ?」

教室の入り口から呼びかけるとともに、とんでもないことを喚き始めた幼なじみ。

窓際の席から瞬間移動したゾロはペラペラとよく動く口を抑えて、廊下へ飛び出した。

クラスメートの武勇伝から始まった会話で、ラブホテル未経験者が仲間内では自分だけとわかったサンジは待ちに待った昼休みに恋人の元へ駆けつけたのである。

口を押さえられたまま廊下を激走し、息苦しさから紅潮した顔でゾロを見上げた。

「ラブホテル、おれも連れてけよ。」

 

潤んだ瞳は、生理的なものとわかっているのに、だからこそ最中の表情とそっくりで。

 

学校の廊下とはいえ、前屈みになったゾロを責めるのは酷だろう。

 

 

 

サンジが後込みするのも無理は無いホテル。別に崩れそうな年代物、というわけではない。

ただ、最近のシティホテル風ではなく、一見白亜の城、いかにもな遮断された入り口、長いカーテンのついた駐車場口…初心者が気後れする条件が揃っているだけだ。

一直線にそこを目指して歩きながら、ゾロは考える。

 

ここでサンジの好奇心をつぶしておかなくては、と。

 

簡単に忘れるわけがないから、他のヤツにも行きたいと言いかねない。

さすがにH前提だったら断るだろうが、カラオケだけ、ゲームだけ なんて言われりゃ、このアホはついて行く。

密室に入ったら喰われちまうに決まってんだろうが!

うがぁっと唸りながらラブホテルに人を引き摺る男が、通報されなかったのは本当にラッキーだった。

 

 

 

部屋の大部分を占めるピンクのベッド。目の当たりにしながら、わざとらしく視線を外すサンジを抱き締める。

「ラブ、ホテルだぞ?ナニするところか分かってなかったなんて言うなよ?」

俯くサンジの金髪の間から、赤く染まった耳がチョコンと出ている。

「あ、あったり前だろ!?汗、汗流してからな!」

 

浴室で丹念に洗われのぼせかけたサンジをベッドに下ろす。

冷蔵庫から、ペットボトルを抜こうとしたゾロの手元がいきなり真っ暗になる。

そして、サンジの慌てふためく声。

振り向くと、ベッドヘッドのボタンをガチャガチャと押している。

「なにこれ!?ゾロ!止まんねー!」

半泣きのサンジが座るベッドは、ぐにんぐにんと上下運動を始めていた。

「なにやってんだ、てめぇ」

呆気にとられたゾロが見ているうちにも、ムード音楽が流れ、ライトは色を変える。ベッドの動き方も変わっているらしく、サンジが揺れている程度から振り落とされそうな激しさまで、目まぐるしいこと、この上ない。

カカカと大笑いしながら、サンジの手元に手を伸ばすと、シュンと動きが止まった。

 

「ホントに、てめぇは機械弱ぇな。OFFっての押しゃ、大概止まんだろうが。」

 

「そんなん書いてあったか?むー、苦手なんだよ。あー焦った。ベッド動くとか意味分かんねーし。」

 

ゾロはそれには答えず、煌びやかなライトを消して、明るい蛍光灯に戻す。

「明る過ぎる。」

サンジのクレームに光量を絞り、音楽のスイッチを切ろうとする。

音楽は有線に変わり、サンジの好きなアイドルの歌声が聞こえていた。

続いてクレームをつけるが、今度は聞き入れて貰えず、室内はシンと無音になった。

 

「てめぇの声が聞こえなくなっちまうだろ?」

 

背後から伸ばしていた手がサンジの躰を這いだした。

 

 

 

 

 

 

 

「…んぅ……あ!あぁっ!ゾロォッ、そこ、イイ!」

「知ってる。」

ニヤリと口角を上げ、増やした指がしつこい程イイ所を擦り上げた。

慣れ始めた躰は十分に開かれ、男の侵入を待っている。

激しく動く指が突然抜かれたときも、期待だけが体に満ちた。

半分ほど挿入したゾロはサンジの体を抱え上げた。サンジが顔を預けていた枕は涎と涙でグチョグチョで、離れる口と銀色の線が繋がった。

座ったゾロの上でサンジが全てを納める。

 

熱い砲身に押し出されるように、サンジが熱い息を吐く。

 

「大丈夫か?」

 

コクンと頷き、背後のゾロにもたれかかったのを見て、ベッドヘッドに手を伸ばす。

途端に、ベッドそのままが揺れ始める。

 

「あぁっ!ひぃっんーー」

 

宥めるような微弱な動きに逆らって、ゾロがグラインドを加え、突き上げるような動きには同調していく。

 

「あっ、あっ、あ、あぁん!」

 

 

「そんなに仰け反ったら、抜けちまうぜ?」

 

背後から抱き締めたまま、ガバッと後ろに倒れた。

 

ズルズルッと入り口の際まで抜け出した熱棒が再び一気に貫いた。

 

 

「やあぁぁぁぁっ!」

 

「きっつ…」

 

千切りそうなほど締め付けながらサンジが達した。

ピクンピクンと、痙攣しながら長い余韻に身を浸す。まだ半勃ちになった先端からはトロリ、トロリと愛液が溢れていた。

 

「おい、目開けてみな。」

 

ゾロの言葉に金の睫毛が震え、濡れた碧眼が現れた。

焦点のあわないまま、背後を振り向こうとするサンジに再び声が飛ぶ。

 

「そのまま、正面。」

 

そこには、天井にはめ込まれた鏡があり、桃色に染まった躰を貫かれながら、大の字で白濁を吹き上げている姿があった。

 

「ひゃぁぁっ!う、うっん~」

 

ゾロを包み込んだ肉壁が絡みつき、締め付ける。

「くっ、うっ」

耐えきれずゾロの熱い迸りがサンジの最奥に

叩きつけられた。

 

 

赤ん坊のように両脚をゾロに抱えられ、あからさまにされた結合部からコポコポッと逆流するソレがはっきりと映っていた。

 

 

 

 

トルルルル トルルルル

無粋な呼び出し音が、現実に引き戻す。

『まもなくお時間になりますが…』

 

「延長だ!」

この甘い時間は、まだ暫く終わらない。

 

fin

 

サイトのお誕生日にプレゼントしたい、と書きだしたものの、長いばかりのヤオイですんません。

疑似恋愛・翼様3か月遅れのハッピーバースディ!

こんなんですが、ご笑納くださいませ!