明日は島に着くという予定通りの順調な航海の昼下がり、
サンジがキッチンと倉庫をチェックし、買い出しメモをスラスラと書き付けるのを
チョッパーが面白そうに見ている。
最近は家事に興味津々だ。
「サンジ-!キッチンの燃料どうだ?」
日用品担当のウソップが声をかける。
「結構ヤバい。次の島あったかそうだからな、安かったら多めに買っとこうぜ。」
「こないだまで、すげー寒かったもんな~。こっちも予想以上な減り方でギリギリだぜ。」
「あー、あと掃除用のやっすい重曹買っといてくれ。」
効率的な買い物には事前の打合せが不可欠だ。
そのやり取りをチョッパーがキラキラとした目で見ている。
「重曹は薬局にもあるぞ!おれが買ってくるよ!」
「そうか?じゃ頼むな。食用のはいらねーから、いっちゃん安いのな。」
「わかった!」
お手伝いしたくてウズウズしているチョッパーは、ここぞ出番、と乗り出した。
「そうそうサンジ、石鹸が今使ってんのがラストだ。どうする?」
「あぁ、廃油も結構あるから、出航したら作ろう。とりあえずの数で良い。」
続く打合せに、またも忙しそうな二人に変われる出番を発見した。
「おれ、おれ!作ろうか?こないだ教えてもらったやつだろ?
今から作れば、明日買わなくて良いんじゃないか?」
「あのな、次の油買ってからの方がいいんだよ。」とウソップが諭す。
サンジがチョッパーの帽子をぽんぽんと叩きながら説明する。
「おれが言ってる廃油てのは酸化しちまってるけど、食えるんだよ。
もし・・・、遭難したとき、そんなんでも舐めてりゃ熱量にはなる。」
「遭難・・・」
「ナミさんがいて、そんなことありえねーけどな、海に絶対は無いんだ。」
「だから、新しいのを買うまで取っとくのか。」
ウソップが甲板の樽を指差しながら答える。
「そうだ。油だけじゃねーぞ、酒でも、水でも中身の入ってる樽にはロープ巻いてあるだろ。
いざって時にゃしがみつくんだよ。」
とくとと説明するウソップの鼻をサンジがつまむ。
「アホップ。能力者が海ん中でしがみつけっかよ。
てめぇも、そんな時にゃ括ってやっからしょげた顔すんな。」
「おれ、何にも知らないんだな。」
「あぁ?あのなー、おれぁてめぇが生まれた頃から船乗ってんだぞ。
簡単に追いつかれちゃたまんねーっての。
そん代わり森のことなら一番わかってっだろ。
一人じゃねーんだ、それぞれが得意なことやりゃ良いじゃねーか。」
タバコに火を点けながら、サンジが苦笑いする。
チョッパーがパッと顔をあげ「おぅ!任せろ。」と笑うのを確認すると、倉庫から出て行った。
残されたウソップがチョッパーに話しかける。
「サンジができねーこと知ってっか?」
ブンブンとチョッパーが首を振る。
「あいつ、何でもギリギリまで頑張っちまうんだよ。人に甘えらんねーんだ。」
チョッパーはドラムの城に青い顔で運ばれてきたときのサンジを思い出す。
「自分にも言い聞かしてんだろうな。ああやって。」
「おれ、サンジが頼れるようになりたい!」
「あぁ、おれもだ。頑張ろうぜ!」
出航後、三人はしっとりタイプだ、さっぱりタイプだと
グリセリンやハーブを混ぜた色とりどりの石鹸を作った。
クッキーの型抜きで形も可愛らしく整え、ナミとロビンの絶賛を受けた。
嬉々として石鹸を作る姿をどう思ったのか、
某船長がかじりつき、口を泡だらけにしたのはまた後の話である。
fin
子供って母親を守ろうとしたときにグンと成長するよね、という男の子の母の希望的観測。