格納庫の板塀の隙間から朝日が差し込む。
「ん、クソ眩し・・・」
がっちりと躰に巻き付く拘束具のようなぶっとい腕はちょっと身じろいだところで外れやしない。
直視を逃れたかっただけなのだから、寝返ればこと足りたはずなのに、少々意地になったサンジは渾身の力で拘束具から抜け出した。
すっかり眠気も飛んでしまった腹立ち紛れにゾロの体躯をまたぎ越す。
「日除けになりやがれ。」
広い背中が作る影に身を横たえた。
間近に見るゾロの背中には、痣や細かい傷が多い。
刀や銃といった人から受けた傷こそ無いが、いつも薄着で落下物を受けたり、高い所から落ちたりしているのだから当たり前だ。
「もう、みんな消えかかってら。こいつの受け身はきれいだしな。」
下手な受け身は腕まで痛めるが、上手い受け身は受けた衝撃を腕から外へ逃す。
だから、ぶつかった腰や背中に跡はついても痛みは残らないのだ。
背中の中央から腰にかけてサワサワと撫で回していた手を、突然、前から伸びた手に掴まれ引き寄せられた。
「んぶっ!」
(人間様みてぇに擽ったがってんじゃねーよ!)
身勝手な憤りで、間近に迫った肩甲骨に噛みつくと、目の前に真新しい傷を発見した。
(あ?最近は戦闘らしい戦闘もねぇのに、なんだ?これ。)
一際赤い筋、両脇にも2本。
まじまじと見た瞬間、サンジの顔が朱に染まる。
ガバッと、身を起こし脇を探るとそこにも、反対側の肩にも、脇腹にも、うなじにも・・・サンジの短い爪がつけた跡が刻まれていた。
「それな、風呂入るとしみるんだぜ。」
「うわ!!てめぇ、起きてたのかよ、趣味悪ぃぞ!」
ニヤニヤとゾロがサンジを見上げながら、言葉を繋ぐ。
「海水はビリビリするしな。」
「それっくらいでごちゃごちゃ言うな!おれのケツの方が重傷だ!」
「ふぅん?」
スルッと臀部を撫でる手をバシッと払いのける。
「てめぇさ、昼間上脱ぐなよ。」
「こんなちっちぇえ傷見える程、誰も近寄んねーよ。」
「見えるかも知んねーだろ!」
「てめぇだって今まで気付かなかったじゃねーか。」
「それでも!」
忙しい恋人を捕まえていられるのはあと僅か。本当は見せびらかしたいと考えているゾロと、隠したいサンジ、勝利の女神はどちらに微笑むのか・・・・一向に改まらないゾロの服装を思い起こせば一目瞭然である。
fin
お誕生日の桜芽ちゃんに捧げます。
全然 誕生日ネタじゃないけど。単純に私の好物の事後翌朝だけど。
ケーキの代りに甘ーい2人を め・し・あ・が・れ♡