「レッツナンパだぁ~」
とウソップを捲き、さて、と考える。
この島はかなり湿度が高く、日が落ちてもムシムシと暑い。
こんな風の通らない町中にはいねぇな、とあたりをつけ、風が吹く水場を探す。
市場を抜けた川のほとりに寝っ転がってるマリモ発見。
やっぱり淡水生物だな。
っつうか、一発で見つけるおれ、すごくね?
ナンパする暇もありゃしねぇ。
「おらクソ迷子、けぇるぞ」
「お、てめぇ、どこ行ってやがった。」
「・・・はぁーっ
こっちのセリフだっつーの。
チョッパー、早くバカを直す薬作ってくんねーかなー。
メシどうするよ?」
「これから行くんだろ?」
「あほ
何時間経ったと思ってやがる。
おれはウソップと食った。
腹減ってんならその辺入るか?
待てんなら材料買ってって宿で作るぜ。」
「ハラは減ってっけど、てめぇのメシがいい。」
ぐっ やべぇ 頬が緩む。
見られないようにクルッと振り返り、まだ開けていたスーパーへ向かって歩き出す。
******
日中に見つけておいた宿はキッチン付きのダブル。
フロントにはゾロが行き、おれは素知らぬ振りをして階段を上がる。
男二人でチェックインなんて、こっぱずかしい真似してたまるか。
汗臭いマリモを浴室に追いやり、メシを作る。
さっき食べたのを再現してみよう。
この島は香辛料が豊富なようだ。
辛味は店の位で・・・、香菜は多分あいつの好みじゃない。
でも まったく無いと物足りないな・・・
部屋は冷房が効いてるが、火を使うとアチィ。
あんまり汗はかかない方だが、この湿気は参るな。
浴室のドアが開く音がした。
「出たか? こっちもいいぞ、運べ!」
マリモに手伝わせて食卓を作る。
「いただきます。」
「はい、どーぞ。」
さて、このベタベタには耐えられない。
おれもシャワー浴びてこよう。
一人で食事させるのは好きじゃないから急ぎたいが、
この後のことを考えると ちゃんと洗いたい・・・。
あぁ、おれ、イカレてんなー
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バスローブを羽織り、髪をガシガシ拭きながら浴室を出る。
「急ぐことねーのに」と声をかけられる。
そりゃ わかってんだけどさ。
「淋しくて、喉通んねーんじゃねーかと思ってね。」
「ばーか。
ま、おめぇがいた方が旨ぇけどな。」
なんだ、こいつ。
今日は珍しいことばかり言うなー。
天然タラシめ。
冷蔵庫からさっき買った酒を出し、ゾロの横に腰を降ろす。
「ワインか?」
「そう
パイナップルの。
この島は果実酒が豊富だな。」
飲んでみろよ、とグラスを渡すと甘さを想像したのだろう軽く顔をしかめるが、一口含んで
おっ、という顔に変わる。
ふふん
「さっぱりしてるな。意外といける。」
自分が気に入って選んだモノを誉められると単純に嬉しい。
「だろ。 度数は弱ぇけどな。」
タバコに火をつけるが、風上であることに気付き、
向かいのソファへ移動するため、立ち上がる。
「そこでいい」
と言われても、煙の通り道で食わせたくねーんだけどな。
「む-」
また同じ場所に座る。
今度は肘掛けに背を向け、背もたれに肘と折り曲げた片足を預けて。
ゾロの背後に煙を吐きゃ、ちっとはマシだろう。
おれだって敢えて離れて座りたいわけじゃねーんだ。
右足は座面に乗り上げ、左足は床に降ろしている。
ゾロがこっちを向いたら、どこまで見えるんだろう。
下着はつけていない。
ゆっくり食わせたいんだか、煽りたいんだか、自分でもわからない。