「あっ、と、邪魔か?」
「ばぁ~か。鼻のくせに、船で余計な気ぃ回すんじゃねーよ。」
寝付けなくて、ウソップが訪れたメリー号のキッチンにはゾロとサンジ、二人の姿があった。
目で座れと促すゾロの向かいに座ると、杯を掲げて、ニヤリと悪い笑顔が向けられた。
「筆下ろし、おめでとさん。」
ウソップの動揺を上回る、盛大なこけっぷりでサンジが片づけていた鍋を取り落とした。
「いや、え!ありがとーっつうか、なんつーか、別におれは!そういうためじゃなくて…」
ごにょごにょとわけのわからない言葉を連ねるウソップを見ているうち、冷静になったサンジは3つの足の長いグラスと、とっておきのシャンパンを取り出した。
ゾロにそれを開けさせ、自分はチーズとトマト、オリーブを串に刺す。
出来たばかりのリェットも、冷やした方が美味いんだけどな、とちょっと迷って、少量を取り分けるとパセリを散らして薄くスライスしたバゲットに載せる。
「理由隠して赤飯ってわけにゃいかねーしな、乾杯ぐらいすっか!」
ニッカリと笑って、サンジも腰を下ろした。
「なんで隠すんだ?言いふらすことじゃねーだろうが、娘にバレなきゃ、いーんじゃねーか?」
「ばっか、クソマリモ。ナミさんに知られたらピュアなお心を痛めちまうかもしんねーだろ~?」
「てめぇ、夢見過ぎだ。そんなウブなタマじゃねーだろ?」
あーん?やるか?といつもの応酬が始まろうとしたとき、ウソップが割って入った。
「だあー!ストップ、ストップ!!乾杯してくれんだろ?」
「そうそう、久しぶりの独り寝が寂しくて眠れないウソップくんを励ましてやろうじゃねーか!」
「そういう乾杯かよ!?」
乾杯して、飲み始めると、やはり話題はソレになる。
何しろ、まだ十代の男三人だ。嫌いなわけがない。
散々ああだこうだと突っ込まれたウソップが反撃とばかりに、二人の初体験を聞いた。
「クソマリモ、てめぇは素人童貞だろ。夜のお姉様にお相手願ったか?」
「最初なぁ。酒飲ませてやるってついてったら、しゃぶって乗っかられたな。そういう商売じゃなかったみてぇだが。
てめぇこそ女と経験あんのかよ?」
サンジの顔が険しくなったのは、その話ゆえか、童貞疑惑か。
「あるに決まってんだろう!?おれはブルネットの可愛らしい子でよ。
船乗りの娘で、次の旅に出る前に大好きなサンジくんに処女を貰って欲しい~なんつってよぉ♪お互い初めてで無我夢中だったもんだぜ~」
ゾロの持つグラスにビキッとヒビが入った。
シャンパンを空け、ワインを、ラム酒をと次々と空けていっても、その話は終わりを迎えない。
赤く染まった顔でいい匂いで、柔らかくって~と言い続けるサンジの肘をウソップがつつく。
邪魔すんな、と興に乗っているサンジは2人目、3人目を滔々と語って………、突然、寝落ちた。
「ゾロ?まぁ、なんだ。昔の話だしよ?」
「わかってる。」
ゾロの手が包んでいたからなんとか形を保っていたグラスが、手を開かれ、パラパラと落ちる。
その様子を見ていたウソップが酒を瓶ごと渡す。
「お前も苦労してんのな。」
目で礼を言ったゾロが、サンジの頭上に手を伸ばす。
「こいつのタチの悪さは天下一だぜ。」
そう言いながらも、サンジの髪を弄ぶ指は優しく動き、穏やかな表情を浮かべているのだった。
fin
話的には終わりなんですが、気になってることがありまして…
仲直りHでゾロ出してない! ←何をだwww
だよね!あれじゃサンジもハンパよね!?という方はお進みください。おまけ
ついでにお友達に教えて貰って、yagi家の定番となったリェットの作り方もどうぞ。
~リェット~
<材料>
玉ねぎ 1/2個
豚三枚肉 500g
白ワイン 適量(一瓶用意して適宜足していく感じで)
<作り方>
玉ねぎを薄切り、豚肉を3㎝角に切って、かぶる程度にワインを注ぎ、4~5時間、ふたをして煮る。
沸騰したら弱火でOK。アクも最初のうちに数回取ったらあとは気にしない(するほど出ない)
ワインは少なくなったら、ひたひたになるまで足す。 それだけ。
キッチンに4~5時間居られりゃ、放ったらかしの簡単料理ですが、美味いのでぜひお試しあれ。
更についでに、コーリングの最初の方でサンジくんが作ったウサギ(ここではチキン)と栗の煮込みを紹介したかったのですが、教えてもらってから更に自己流になっちゃっててわかるかどうか…
…よかったら調べてみてください。
~チキン・ア・ラ・クレシィ~
<材料>
玉ねぎ 1/2個
ベーコン 1枚
鶏もも肉 2枚
人参 1/2本
きのこ類(しめじ、マッシュルーム等なんでもOK) 適量
〇栗 一袋
〇ケチャップ 大さじ2
〇ウスターソース 大さじ1
白ワイン 適量
塩 少々
こしょう 少々
<作り方>
玉ねぎとベーコンを薄く切って、バターで炒める。
鶏もも肉は大き目に切って塩、こしょう、小麦粉ををまぶし、バターで焼き目をつける。
人参は乱切りに。
〇以外をすべて小さ目な鍋に入れ、かぶる程度に白ワインを入れる。
沸騰したらアクを取り、スープの素を入れて、火を弱める。
別の容器に剥いた栗をケチャップとソースで絡め、鍋に投入。
15分程度煮込んだら出来上がり。
白ワインで煮るので他の調味料は控えめでも美味しいです。でも、ワイン勿体ないので、小さ目なお鍋でOK。料理酒ではなくワインにしてください。980円とかので大丈夫だから。