Pain “ 昨日 ”

ゾロが風呂から上がると、先に上がったサンジが上半身裸のまま鏡に写った自分を凝視していた。

「風邪ひくぞ。ナルシストの道に目覚めたか?」

「てめぇじゃあるまいし。そうじゃなくて、ちょっと見てろよ。」

何を見ろと言われているのかもよくわからないが、その前のセリフが聞き捨てならない。

「いつおれがナルシストになったよ。」

「体鍛える男ってそうじゃねぇの?油塗ってポーズとりそうじゃん。あ、ほら!」

「え?」

「なんだよ、見てろって言ったろ!」

「腹みてりゃいいのか?」

随分見慣れてきたサンジの突き出た腹部は、当然いつもの洋服では収まらず

ゾロのゆるいパンツのボタンホールに輪にしたゴムひもを通して辛うじてボタンをしている状態だ。

だから、ファスナーは閉まらず、日中は泣く泣くゾロの腹巻をさせられている。

最初は、チョッパーに腹帯を巻かれたのだが、あまりの不便さに音を上げたのだ。

それを隠す上着も、いつものジャケットでは肝心な腹部が開いてしまい、暖をとれない。

かといってナミが差し出したスパンコール付きの刺繍が入った淡いオレンジのチュニックは

勘弁してください、と辞退したため、数少ないルーズなTシャツやセーターのフル活用だ。

サンジの意図もわからないまま、正面に立って見下ろしていると、突然ぐにゃんと腹部が突き出た。

「え!」

驚くゾロにサンジが得意気に声をかける。

「な?」

再び、ぐにゃん、と一部が飛び出し、腹全体がうねるように動いたのを見て、

ゾロが恐る恐る、手を伸ばす。

「すげー。動いてる。」

「な!動いてるよな!生きてるんだな~」

へへっと笑うサンジが、あんまり幸せそうでそのまま浸らせてやりたい気もするのだが、

触った腹部のあまりの冷たさに、苦言を呈することにする。

ここは秋島、寒がりのサンジが半裸でいられる気候ではないのだ。

「でも、もう服着ろ。腹冷たすぎっぞ。

 そいつも、寒ぃって文句で暴れてんじゃねぇのか?」

腹巻を差し出すが、寝るときまでそれはイヤだ、赤ん坊がマリモになる、と布団に逃げ込んだ。

「てめぇは?寝ねぇの?」

布団の端を持ち上げて、中からサンジが声をかける。

「誘うなよ、我慢してるってのに。」

苦笑しながら、横向きで寝ているサンジの隣に向かい合うように横になるが、

どこまで引き寄せていいのか、どの程度力を入れても平気なのか、わからない。

「遠いな。」

つぶやくと、よいしょ、とサンジを跨ぎ越し、背中から抱えるように寝なおした。

サンジが首を捻り、背後のゾロをちらりと見て笑う。

「なぁ、なんで我慢してんの。腹ぼてじゃ欲情しねぇ?」

「しねぇわけねぇだろ。」

「んじゃ、キスしろ。」

くすくす笑いながら、じゃれるようにもつれ合う。

舌を絡ませあい、髪を梳けば漏れる吐息が熱い。

「なぁ、してぇよ。」

「ダメだろ。」

「チョッパーがダメっつったのは『激しいの』だぜ?」

「突き刺しそうで怖ぇ。」

「そこには居ねぇぞ?おれ、毎朝う!」

ガバとゾロの手が口を塞ぐ。

「わかってけっど、言うなって。」

塞がれた手をペロンと舐める。

「な―――、ゾォロ。触って。」

「甘えた声出してんじゃねぇ!くそ、知らねぇぞ。」

ゾロが上体を起こし、精一杯後を振り返っているサンジの唇を塞いだ。

咥内を嘗め回し、前歯の裏を突付くとビクンと半身が揺れる。

右手を胸元に降ろすと、小さな尖りは既に立ち上がっていた。

「してぇってのはホントだったんだな。」

「そ、なこと、ウソで、言うわけねぇだろ・・・」

「逆のウソはよく言うじゃねぇか。」

身体をまさぐりながら、話しかけてくるのに答えようとすると、ゾロの平然とした声に反して

切れ切れになる声がイヤらしくて、手を掴んで宙に浮かせてから一気にまくし立てる。

「それは、てめぇのしてぇしてぇに付き合ってたら身がもたねぇから!

 おれが自制してやってんの!」

「へ-、ウソなのは認めんだ。」

瞬間、ボンと音がしそうな勢いで真っ赤になったサンジの手から力が抜けたのを見計らって

するんと右手を引き抜いた。

「よいしょ」と声を出し、胡坐のように折った片足の上にサンジの上体を引き上げる。

「おまえ、何、さっきから よいしょ、よいしょ言ってんの。ジジくせぇな。」

「無言で簡単に持ち上げんなっててめぇが言うからだろ。」

言った。確かに。

お手軽に腕一本の力で身体を持ち上げられたり、ひっくり返されるのは

男としてムカついて文句を言った。

「だからって、よいしょは無ぇだろう~」

さっきの腹いせも兼ねて、ここぞと文句をつけてみる。

「うるせぇな、てめぇ口が暇なら手伝え。」

「んっ!」

言い様、腕枕をしている左手の先、指二本が口に突っ込まれる。

サンジは眼を瞑り、まるで性器に施すようにいやらしく舐めまわした。

ゾロは満足げにその感触を楽しみながら、腹にめりこみそうなほど屹ち上がっているサンジのモノを

掴み、サンジの咥内の動きと連動するように動かすと、時折耐え切れないように

サンジが口を離し、荒い息を継ぐのがまた満足感を擽るのだった。

サンジの半身を自らの足から降ろし、再び左半身を下にした状態で横たえさせる。

「足、ずらせるか?」

「ん・・」

サンジが揃えて伸ばしていた両足をずらし、右足の膝をシーツにつけるように折ると

しっとりと濡れた指が双丘の谷間をゆるゆると撫で始めた。

探検を始めた指が、秘められた華筒の入口を見つけ、トントン トントンとノックする度、双丘が揺れる。

一旦、放置されていた前にも手を伸ばされ、悪戯が再開されると、固く閉ざされていた蕾がひくひくと

開いてノックの指を迎え入れた。

「すっげ、おれ力入れてないぜ。」

飲み込むように中へ中へと動く粘膜がゾロの指に絡みつく。

「だって、仕方ない、だろ。」

「したかったんだもんな。」

途端、きゅうっと全体が絞まり、ふわんととろけた。

「言うな、ばか」

「言った方がヨさそうだぜ?」

前からは先走りがとめどなく溢れ、膨れた腹の下部を汚している。

ツと、ゾロが腹部を撫でた。

「イケナイコトしてるみてぇだな。」

「ははっ。それってソソラレねぇ?」

「ふん、タチ悪ぃな。」                                                                                          

「それが、イイんだろ?」

口では倣岸に嘯きながら、内心の不安を伝えるかのように、後ろは指にすがり付く。

相反した動きをする肢体から力を抜かせるべく、入れただけだった指の探検を開始する。

中のこりこりとした場所にたどり着くと、上気した肌が更に朱に染まり、ぽつんと立ち上がっている

赤い飾りが艶かしい。

圧し掛かるわけにはいかないし、仰向けは腹が重いと言っていたのを思い出し、

自分で同時に攻めるのは諦めたゾロは、シーツを掴んでいるサンジの手を取り、胸元に導く。

「届かねぇから、てめぇで可愛がってやれ。」

返事の代わりに吐かれた息が熱い。

導かれるままに尖りを摘んだ指だったが、ゾロの手が猛る雄に戻り、後ろに伸びた指が三本に増えたときにはそれ以上弄ることは出来なくなっていた。

「もう、や、め・・ゾロ、出るから、やぁ、ゾロ!達っちま------は、なせ」

「いいから、達けよ。」

離すどころか、三本の指を中指、人差し指、親指に変えてやる。すると、

二本が奥を刺激するのと同時に親指が前立腺を引っかくからだ。

「や、ゾロ、ゾロ、あ、あ-----っ!」

自分では止めようの無い噴流に身を攫われたサンジはビクンビクンと背を震わせながら

最後の一滴まで押し出すように扱きあげる優しい掌に委ねた。

 

 

背中にピタリとくっついて横になる男に憮然と文句を言う。

「まだ達きたくなかったのに。」

「なんで。気持ちよかっただろ?」

返事の代わりに尻に当たる熱いままのゾロを挟んでやる。

「やめろ、って」

「やめねぇ。これがいい」

「今日は挿れらんねぇ、だろ」

「だから、大丈夫だって。」

素股のように、全体を挟み、腰を動かすとゾロの熱が蕾の縁をこすり、思った以上に気持ちいい。

まだ達したばかりで敏感な肢体はあっという間に熱くなる。

「なぁ、ゾロ。欲しい。ゾォロ。挿れて」

浮かされたように腰を振りながら呟くサンジに、握ってもらって終わればいいか、などと考えていたゾロはガバリと身を起こす。

「だから、甘えた声出すなっての!」

「ゾロ、ゾォロォ。」

「くそ」

転がされている自覚もあるが、普段からは考えられないサンジのこの声には逆らえない。

自らを挟んでいるサンジの右脚を持ち上げ、両脚の間に入り込むようにして、

熱い入り口に自身を充てるとそれだけでサンジがハァッと熱い息を吐く。

正常位と後背位しかしたことがなかった二人にとって、身体の向きが90℃異なる状態でうまく

身体を繫げることが出来るのかわからなかったが、腹部に負担のない状態はこれしかないと思った。

負担は正座のような状態で挿入するゾロにかかり、あまりの動きににくさに、サンジの腰の下に

枕を入れて下半身を持ち上げてみると、想像以上に楽になった。

ゆっくりと挿入すると、サンジが絡みつくように迎え入れ、吸盤のように吸い付いては奥へ促す。

「はぁ-っ、すげ、きもちィ」

「おお、てめぇん中、サイコーだ。」

「意地、はって、いれよ、としなかった、くせに」

「あー、やせ我慢した。」

やせ我慢、の一言にプッと噴き出すとキュウッと絞まり、同時に呻き声をあげる。

「も、ゾロ・・・動けよ」

ギンギンのまま長らく放置されてたゾロも、熱が冷める暇もないサンジも、あっという間に登りつめた。耐え切れないその瞬間、ゾロが勢いよく抜き去り、その動きでサンジが放出し、ゾロも白い双丘にぶちまけた。

 

荒い息を吐きながら、二人の顔が近づき、余韻を楽しむようにバードキスを繰り返す。

 

 

「中出ししなかったの、初めてじゃねぇ?」

「そうだな。」

「やっぱ、抵抗あるわけ?」

「双子になったら困るし。」

「ぶはっ。ならねーよ。おまえ、仕組み知らなさ過ぎ!普通の女の子でさえこういうときは孕まねーの。」

「いいんだよ、別に。そんなん知る必要ねーだろ。」

ちゅうっとサンジの額にキスすると、抱きかかえて立ち上がる。

あ、よいしょって言わなかったなんて、ぼんやり考えながらサンジが凭れて目を瞑る。

されるままに、浴室で身を清められ、穏やかな眠りについたのだった。

 

fin