Attention!

イロモノの多いサイトで申し訳ないのですが、こちらのサンジくんはのっけから生理痛です。

にょたではありませんが、そういう女の子の色々を体験しちゃいます。

だって、管理人が生理痛で苦しんでるときの腹いせに浮かんじゃったので。

この痛み、てめぇらも知りやがれ!的な。

 

検定受験を控えた時期に書いていたため、長文は自粛していました。

そのため、毎日少しずつUPという連載でした。

読みにくいかもしれませんが、ご了承ください。

Pain 1

(1/11分)

 

「たっだいま~」

ナミとロビンがメリー号に帰ると、キッチンは沈鬱な雰囲気に包まれていた。

「ナミさん、ロビンちゃん、おかえり・・・」

一瞬顔を上げたサンジだが、椅子に浅く腰掛け、上体をテーブルに凭れ、荒い息を吐いている。

チョッパーは泣きそうな顔でその腰をさすっている。

奥からゾロの声がかかった。

「マット敷けたぞ。とにかく横にさせたらどうだ。」

「あ・・・その前に便所行きたい・・・」

ゾロの肩に掴まりながら、サンジがキッチンを出て行った。

 

「な、に?どうしたの?サンジくん!」

「ナミ~、ロビン~ 

おで、どうじだらいいがわかんねぇんだ~ 

ザンジ、あんな、ヅラゾウなのに・・・うぅ~」

 

町に出ていたサンジがお腹を押さえ、足を引きずるように帰船したのは数刻前のことだと言う。

「下腹部の痛みに頭痛、関節痛、足のむくみに腰痛、そして下痢・・・これはアレよね、ロビン。」

「そうね、ずいぶん重いし、フルコースだけど。」

「え?二人とも症状聞いただけでわかったのか!? 

すげぇ、なんなんだ! 

おれ、どうしたらいいんだ!?」

「鎮痛剤飲ませて、お腹暖めて寝かせときなさい。生理痛よ。」

「え!サンジは男だぞ?」

「そんなの知らない、でもそれは生理痛よ。長くても明後日には治るわよ。 

治らなかったら、知らない病気かもだけど。」

 

果たして、ナミとロビンの判断は正しかった。

 

(1/12分)

 

幾分痛みの薄らいだサンジが語るところによると、

暴力をふるわれているところを助けた女性から、八つ当たりされたらしい。

「あんたたち男が勝手だから、あたしたち女が苦労するのよ!

 女の痛みを思い知りなさい!!」と言い捨てて走り去ったのだ、と。

 

「妊婦さんだったのに、あんなに走って大丈夫かなぁ~」

湯たんぽを抱えて横たわるサンジが弱々しいながらもメロリンすると

「おめぇは、そんな目にあわせた相手をよく心配できんな。」

タオルケットの上から腰を擦りながら、ゾロが心底呆れた声を出す。

「子供を産むために、毎月毎月こんな痛い思いをしてるんだぜ、レディはやっぱり偉大だぁぁぁ!」

「すくいようのねぇアホだな。」

 

「それより、その人危険なんじゃない? 

 そんな力を持ってる人に八つ当たりといえど、恨まれちゃって。」

「魔女か。お前の仲間じゃねぇか、話つけて来いよ。」

「誰が魔女か!」ゴイン!とナミの拳骨がゾロの頭に炸裂した。

「その人、島で話題になっていた巫女さんじゃない?」動じないロビンが口を挟む。

不思議な力を持つ神聖な巫女アリシアが、神託と無関係な男の子を宿したと、

島で騒ぎになっていたという。

「じゃぁ、ロビン。とりあえず、その神殿に行ってみる?」

「そうね。うまく話せればコックさんの生理痛も治めてもらえるわ。」

「じゃぁ、ちょっと行ってくる。 

 サンジくん、ご飯は買ってくるから、ゆっくり休んでなさい。」

サンジの盛大な謝意と横になったままの不思議なメロリンに送り出され、

意気揚々と出かけていったナミとロビンだったが、巫女に会えないまま消沈して帰ってきた。

 

(1/13分)

 

深夜、サンジがふと目を醒ますと、ぼんやりとした光の中に昼間の女性が立っていた。

「ごめんなさい。

 ごめんなさい、あなたには何にも関係ないのに、助けてくれたのに・・・」

「あ-、これはやっぱりあなたの力?

 すごいね、できればそろそろ治してくれるかい?」

「もちろん。」

 

やわらかい光に包まれ、先ほどまでの痛みが全てうそのように消えた。

「ありがとう、レディ。

 あなたはアリシアちゃん?この島の巫女さんなんだって?

 朝になったら、お礼に伺ってもいいかな?」

「お礼って・・・怒ってないの?」

「何を怒ることがあるの?レディの偉大さを実感した、貴重な体験だったよ。」

「優しいのね、そんな人に八つ当たりなんてしたから、私、バチが当たったんだわ。

 会いに来てくれても、もう私・・・いないの。」

「いない?」

「この子、産んであげたかった・・・あとひと月、暖かいお腹の中に居させてあげたかった!」

「泣かないで。何があったか聞いても良いかい?」

 

定期船の乗組員である男と恋に落ちたアリシアは、次の帰港時に結婚しよう、という男の

言葉を信じ、 信仰を捨てる覚悟で体を委ね、子を宿した。

なのに、帰港した男は、お腹の大きい彼女を見て驚愕した。

島人や家族から相手は誰か、神殿を守っていける相手なのか、と何ヶ月も責められていた彼女は

ようやく、心の平安が得られると信じ、すがった相手に突き放された。

言うに事欠いて、自分の子とは限らない、とまで言い張り、逃げたのだ。

何回かの言い合いの末、とうとう彼女は殺された。

殺意まであったわけではない。

それは不運な事故だったのかもしれない。

しかし、彼女は子供を宿したまま、崖下に打ち捨てられた。

 

「ひと月か。おれでよければ・・・おれん中に来るかい?」

 

(1/14分)

 

「どうして、そういう考えなしなことをすんだ、おめえは!」

メリー号のキッチンにゾロの怒号が響き渡る。

椅子に腰かけたサンジに伸し掛からんばかりの勢いだ。 

 

「考えてねぇわけじゃねぇ!できる事をしただけだ!」

返すサンジの腹部ははちきれそうなほど膨らんでいた。

 

「出来ることの判断がおかしいだろうがよ!死んだ赤ん坊を腹ん中に入れるなんて!」

「かっさばいて実体を突っ込んだわけじゃねぇ!」

「それなら掻っ捌きゃ出せるが、そりゃどうやって出すんだよ!」

「出さなくていいんだよ!ひと月くれぇ問題ねぇだろ。普段どおりだ、放っとけよ。」

 

呆気に取られたまま見守っていたクルー達からチョッパーが慌てて口を挟む。

「駄目だよ、サンジ、普段どおりじゃ!

 もう産み月なんだろ。重いもの持ったり、上に手を伸ばしたりしちゃ駄目だからな!」

 

「え」

 

「もちろん、タバコ、酒、戦闘や喧嘩もだ。

 運動しなさ過ぎもだめだけど、普段通りの料理や家事はハード過ぎだ。」

 

「え・・・」

 

「大丈夫だ、手伝うから!」

ドーンと胸をはる船医が、ここしばらく用無しだった産婦人科の知識を披露して

出産に向けてわくわくが膨らむのと対照的に、思いがけない展開にサンジの意気が下がる。

 

「サンジくん、悪いけど、私は手伝えないわ。」

更に敬愛するナミの冷たい声に、サンジの気持ちが沈む。

「ナミさん・・・」

さきほどのゾロに全面降伏して、

考えなしなことしてごめんなさい!とまで思いそうになる。

 

が、ナミの怒りの矛先はサンジではなかった。

「それより、その男ぶっ飛ばしてくる!」

「おれも行くぞ!」ルフィが立ち上がる。

「女の敵ね。」ロビンが冷ややかに微笑む。

「その子の体も埋葬してやらなきゃな。」道具をチェックしながらウソップがつぶやく。

 

(1/15分)

 

残されたのはサンジと、戦えるのが一人は残れ、と言い渡されたゾロの二人だった。

 

「まさか、そこまで制限されるとは思わなかった・・・」

 

「だから、考えが足りないっつうんだ。」

 

「ちょっと甘く見てたかもしんねーけどよ。

 何も、彼女のためだけじゃねぇ。 

 赤ん坊を宿す気持ちっつうのを体験してぇ、とか思っちまったんだよ。」

 

「なん、で・・」

喧嘩の延長のつもりで意地悪げに笑いながら、軽口を叩いたゾロだったが、

あっさり認めたうえで、思いがけぬことを言いだすサンジに焦る。

 

「どんだけヤッっても、てめぇの子は孕めねぇしなぁ。」

 

俯いたまま話すサンジの髪を掻き上げる。

「子供が欲しいか?」

 

「別におれの子が欲しいんじゃねぇ。

 ・・・いっつも、てめぇに無駄玉打たして悪ぃなぁって、とこか。」

冗談めかして喋りながら、いつものニヤリとした笑いを口元に浮かべるが、

笑っていない眼差しを隠すように目を瞑った。

 

「あほ」

さらりと指の間から逃げようとする金髪をクシャリと撫で、抱き寄せた。

噛みしめた唇を舐め、上唇と下唇を交互に吸って、うっすらと開いたところに舌をねじ込む。

整った歯列をひとつひとつ確認するように辿っていく。

「ん゛っ」

苦しげな声が喉の奥から漏れるのを聞き、歯と歯の間に舌先をつっこみ、こじ開ける。

「はぁっ」

堪らず吐いた息が二人の口の端から漏れていく。

だらりと下ろしていた両手が上がり、ゾロの肩と上腕にそっと乗せられた。

その重みに気をよくして、傍若無人に咥内を味わう。

舌と舌を絡めて、ゾロの口の中に舌を引っ張り込んだときには、

サンジの両手は背中にまわり、しがみつくように抱きしめていた。

荒い息を吐きながら口を離すが、離れがたくて閉じたままだった瞼に口づける。

すっかり紅潮した、唾液で濡れた頬を拭ってやると碧眼が現れた。

その拍子にころりと、透明な滴が零れ落ちた。  

 

(1/16分)

 

男の行方はすぐに知れた。

本来乗っていた定期航路の船はまだ島に停泊しているのに、

男は急にその船を辞め、 昨晩出航した商船に乗り込んで行ったのだという。

「怪しいです、って言ってるようなもんだよな。」

ウソップの呆れた声にロビンが答える。

「信仰心の篤い島だもの。自分のしでかしたことが怖くなって逃げたんでしょう。」

「巫女さんを穢して、殺しました、じゃね。  

 怖くもなるでしょうよ。  

 ましてそんなヤツ、一皮むけば気の弱いヘタレ男よ。」

「なー、ごちゃごちゃ言ってねーで、早く追いかけようぜ。  

 おれは、そいつをぶっとばさねーと気がすまねーぞ!」

「わかってるわよ!  

 まず、商船の取引先を探って行先を特定したら、エターナルポースを買うの!  

 わたしたちのログポースはまだ溜まってないから、持って行けないし  

 持って行っても、役に立たないからね。」

 

順調に準備が整うのに反して、アリシアの遺骸の発見は叶わない。

ナミ、ルフィ、ウソップの三人はメリー号で男を追いかけ、

残る四人は島に残って捜索を続けることになった。

 

「い~い?サンジくん。

 私達がきっちり、ぶちのめして連れて来るから、ムリしないのよ。

 あんたが無茶したら、赤ちゃんが苦しいんだからね!」

 

ナミの刺していった釘効果はテキメンで、

ヘビースモーカーのサンジが、タバコを咥えることすらしなかった。

 

捜索に適したロビンと、チョッパーの鼻をもってしても、アリシアの発見は困難を極めた。

サンジが遭遇した暴行現場を中心に、崖という言葉を唯一の手掛かりに

あらゆる場所の崖下を捜索する日々が続いた。

 

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