キッチンに入ったとき、新聞がパサリとテーブルから落ちた。
拾いながら、ふと目に入ったのは『今日はなんの日?』というコーナー。
あと一時間ほどで終わる『今日』にまつわる○○の日が紹介され、こまかに由来が載っている。
ふーん
なんとなく、それを読んでいたらフワァッと風が吹き込んだ。
あわてて、新聞紙を押さえて、ドアに向く。
「新聞?珍しいもん読んでんな。」
「たまにはな、おれ、知性派だし!?」
「けっ、言ってろ。」
ズカズカとワインセラー(とは名ばかりのきついラムやジンばかりが並ぶ)に向かったゾロが「なんか載ってんのか?」と聞いてくる。
「おー、あのな、今日は亀の日で、キスの日なんだってよ。
ふたつ並べっとさ、やらしいよなー。」
「おまえ…どこが知性派だよ、エロ脳が。」
心底呆れた顔で答えておきながら、おれの指先を捉えた手があやしく這い上がる。手首の内側をつぅっーと撫でられると弱い。
「なに。」
バシッと振り払って不機嫌な声を出す。
「おれの亀にキスしろよ。」
「どっちがエロ脳だよ、明らかにてめぇのほうがたち悪ぃわ!」
ゲシゲシと股間を蹴ると、おさえながら
「なんだよ、お誘いじゃねぇのかよ。」
と邪気なく笑う。この顔も弱いんだよな。
蹴られて固くしてる変態だけどな。
ゾロを椅子に座らせ、その前に跪く。
お?という顔に、色っぽい表情を意識して作り、笑いかける。ジッパーを下ろし、ムスコを取り出すと、くりくりと撫でて、チラリと見上げた。
「そんかーし、もうひとつのなんの日はてめぇがやれよな?」
反論の隙は与えない。
あっという間に成長したムスコを渾身のテクで育ててやる。
ゴクッ
青臭い液体を飲み下すと、
シャツに伸びた手を留める。
「おれいいから。それより、なんの日。」
「あぁ、さっきのな。
なんだよ、どこにキスして欲しいって?」
ニヤニヤ笑う顔に、新聞を突きつける。
『恋文の日』
「紙これな、ペンもあるぞ。あ、鉛筆のがいいか?」
あからさまにげんなりとした顔をするゾロをニコニコと追い詰める。
どうせ、書きはしねーだろーと踏んでたんだが、思いがけずペンを手に取った。
ええ!?とのぞき込むと見るな、と片手で隠しやがる。おれ宛なのに。
「おら、できたぞ!」
ズイッと差し出されたその紙には
『キライじゃねーよ
クソコック』
と、やっつけ仕事の殴り書き。
「こんなんラブレターじゃねーだろ、くそ!ラブレターってのはなぁ、もっと、褒め称えてありったけの思いをだなぁ!……」
あぁ、ムカつく、ムカつく、このクソマリモ!
何よりムカつくのは、こんなん貰って舞い上がるおれ。
もし、ゾロが『嬉しいくせに』なんて言いやがったら、絶対殺す、と心に決めて、丁寧に畳んだ恋文を胸ポケットに仕舞った。
fin
とねりこ通信のみう様がブログでUPされていた恋文の日のSSに滾って、コメントにこれを書きこみまして…コメントとして長すぎるし超迷惑かと思って消してください~とも書いたのですがwwwwお優しい方なので残してくださいまして、みう様のお客様からもコメントをいただいて舞い上がってしまいました。拙宅UPもご快諾いただいたのに、更新遅くて申し訳ないです。
これは、5月22日の話なのでしたー