サンジは息苦しさに目が覚めた。

ふっと目を開けると、自分のつま先が見える。

首が90度に曲がっていて、そりゃ苦しいわけだ、と伸ばそうとするが動かない。

後頭部につっかえ棒のようにゾロの腕がある。

腕枕にしていた太いゾロの上腕からずり落ちたようだった。

ギシギシと軋む体にカツを入れ、上体を起こす。

 

昨日、正確には今朝か、の記憶がない。

またやっちまった・・・ため息を吐きながら、軋む首を倒し、右に一周。

 

 昨晩も、何回達したかわからない状態で、意識を失ったのだ。

 こいつは満足したのか?一度は達ったよな・・・グリンと左に一周。

 

船ではナシ、せめて軽く・・・なんて、始めちまうとぶっ飛んじまう。

結局んとこ、おれら若ぇし。

こいつがうま過ぎんだよな。むかつくことに。

 

首を左に倒し、右腕をグルンと回す。

後始末っつうか、風呂で洗われたっぽいな。

それで起きないってどうよ、おれ。

 

逆に首を倒し、左腕を回そうとしたら、激痛が走る。

 「い゛っ!」

 

思わず上げたうめき声に反応したか、後ろから伸びた腕に掴まれる。

「んだよ。」

「腕。」

寝ぼけてんのか?腕を掴んで腕って、This is a Pen以上にだから何?って感じなんだが。

「人語を話せ。んで、腕も離せ。」

振り払おうとすると、ますます力を籠めやがる。

「めちゃくちゃすんな。そのままちっと待ってろ。」

 

へ。 そのまま・・・って?

上げかけて、止められた腕は、前に伸ばして肘が一番高い位置で捻りかけた状態。

このまま?

よっぽど痛めそうな恰好なんですけど?

 

ほどなくして湯気の立った洗面器とタオルを持ってゾロが戻ってきた。

「なんだ、おまえ、そんな恰好で。腕楽にしておけよ。」

「てめぇがそのままっつったんだろうが!」

「あー。そうか?

 ま、いい。そっち向いてろ。」

言いながら首に熱いタオルが乗せられる。

「な!」

なんだ、その言いぐさは!と喉まで出かかっていた言葉は熱さに遮られる。

「熱かったか?」

「いや。平気。

 が、先に言ってくれ。びっくりすんだろ。」

「あー。わりぃ。」

背後で膝立ちになったゾロが、タオルの上からマッサージしてくれる。

やわやわと強張った筋肉をほぐす手と、普段は不遜と思えるほど偉そうな男が

こうして二人のときは気安く謝罪する、その優越感にほくそ笑む。

「なー、ゾロ。きもちイー。もっと」

「おま!」

「ん?」

「くそ!」

ばーか。何を連想してんだか。

そういうときにこんなこと言わねぇだろが。

・・・言ってねぇよな・・・?言ってたらさすがにイヤだぞ・・・

 

 

うつ伏せになって、しっかり腰から足先までマッサージしてもらったサンジは、

ご満悦で立ち上がる。

んーっと伸びをすると、左肩に違和感が走る。

 

「どうした?どっか変か?」

「いや、んなわけねぇか。気のせいだ。サンキュ。」

 

 

メリー号のキッチンは、一般家庭のキッチンと同じサイズで作られているため

男には少し低いのが難点だ。

猫背で野菜を切り、首を伸ばして火を止め、

しゃがんで冷蔵庫を覗いていると 肩の違和感がビリビリと主張を始める。

だましだまし、朝食を整え終わった頃、クルーが起き出してくる。

 

左肩を右手で摩りながら、肩を回すサンジの姿を見咎めたチョッパーが声をかける。

「サンジ、どうした?」

「いや、なんか寝違えたかな。大丈夫だ。席に着け。」

「寝違え方にも色々あるんだぞ。ちょっと診せてみろ。」

「メシが冷めちまう。後でいいよ。」

チョッパーを言いくるめ、食事を始めたものの、給仕中に痛みを伴った痺れは だんだんと降りていき、

痛みは肩に残したまま、肩先が痺れ、上腕が痺れ、

食事が終わる頃には肘がビリビリと痺れていた。

皿を片付けるのもままならず、チョッパーの診察を受けることにする。

 

「あぁ!やっぱり!これは筋を違えたんじゃなくて、神経の根本を痛めてるんだよ。

 こういうときは、強く揉んだり、さっきみたいにグルグル回したりしちゃダメなんだ。

 しばらくビタミンを大量に摂って欲しいんだけど、食べ物でいける?

 無理そうなら、サプリを出すけど。」

「いや、仕入れたばっかだ。大丈夫。」

「じゃ、鎮痛剤だけ用意するな。

 サンジは猫背気味なんだから、首も前に曲がりやすいんだ。普段から気を付けて。

 下向いて髪洗った後とか、勢いよく顔上げちゃだめだぞ。

 しばらくは料理もうつむかないでやって欲しいんだけど。」

「えぇ!そりゃ無理だ!」

「おれもいっぱい手伝うから・・・」

食後の茶を飲んでる風を装いながら、ラウンジに留まっていたゾロが口をはさむ。

「ウソップにスツールみてぇな椅子作らせたらどうだ?」

「うん!それはいいな!おれ、頼んでくる!」

トトトッと駆け出していくチョッパーを見送りながらゾロがボソッとつぶやく。

「揉んだのが悪かったんだな。」

「ホントだよ。もうおめぇのマッサージは信用しない。」

しばらくの不自由を思い、不機嫌極まりない顔で返す。

「あー、悪ぃ。」

あ、また謝った、と思い振り向くと、叱られた子供のようななんとも心細げな顔をしている。

そんな顔を見てしまっては怒りが続くわけもなく。

「ウソだよ。あんときゃホントに気持ちよかったんだ。あんがとよ。」

途端に上昇する気配が伝わってくる。

そんなの顔見なくたってわかる。

あぁ、もう。

おれの言動に一喜一憂ってどうなのよ、おまえ。

ったく、かわいいじゃねぇか、クソヤロー。

fin


自分が痛めたんです、神経根。

あんまり痛くて、痺れて、呻きながら

月待ちのmia様に妄想をぶつけたら

とっても素敵なお話にしてくれました。

そっちのゾロはより痛めるようなことはしません。

しっとりラブラブです。

私もそうしたかったはずなのに、なりませんでした。

なんででしょう?

 

しかもタイトルはいくら考えても朝→モーニング→岸田智史

 →君の朝だよモーニングモーニング~のループでした。 (古っ!)