Guilty Ⅱ3

 

サンジがふと目を覚まし、煙草を引き寄せる。

隣で久しぶりに穏やかな顔で眠るゾロを見やる。

そんなことで怒っていたのか、と思い出し、ほくそ笑んだ。

いつでも死ぬ覚悟はできていると言い放った誇り高いこの男が、

 自分の怪我に動揺したのは、正直嬉しい。

しかし、見くびるな、とも思う。

信用しろ、おまえが簡単に死なないように、自分だって簡単には死なないんだ、と。

だから、敢えて怒鳴りつけた。

戦いの最中に、自分が横で死にかけてたら、助けに来るんじゃないか、と

考えたら心底ゾッとした。

人の夢を妨げるのは生涯一度で充分だ。

おまえの夢まで背負えねーよ。

おまえは誇り高い獣――枷をつけるな。おれを足枷にするな。

 

長くなっていた灰を落とそうと灰皿に手を伸ばすと、捻られた腰から激痛が走った。

久々なのに、船の中なのに、後先考えず貪るようなセックスをしてしまった。

捨てられる覚悟も必要だったか、と涙を流したのは今朝のことなのに、

打って変わって舞い上がっている自分に苦笑する。

セックスで抱かれているのは自分の方だが、自分が抱いている気分だと言ったら、

ゾロは笑うだろうか。

 

最初は屈辱を感じていた交わりが今では充足感を与えてくれる。

 

毛布で体を包み直してサンジが身を横たえると、

無意識のままのゾロがサンジの体を引き寄せる。

引き寄せられるまま、ゾロの体の上にのしかかるようにして

首筋に鼻先をくっつけて目を閉じる。

 

覚悟を決めたなんて嘘だ。

恋人を失っても平気な覚悟なんて決められる訳がない。

いくら想像しても慣れなかった。

 

でも、死線を超えるたび、

血まみれのゾロを見るたびに、

潤む目を前髪に隠し、

震える指先をポケットで握り、

わななく唇に煙草をくわえ、

ギュッと締まる喉に煙を吸い込めば、

笑い声で憎まれ口を叩けるほどにはなったから。

 

いつか、本当に笑えるようになるかもしれない。

 

そして、ずっと先のいつか、おまえが死んじまったら

 

おれは

 

泣くだろうか

 

壊れるだろうか

 

でも、その時には、ゾロ

 

騙す相手がいないんだから、

 

隠さなくて良いよな。

 

おまえは、

 

空の上から

 

なんだ、その様はって 笑えば良いさ。

 

fin


DBFのゾロのセリフにずっと違和感があったんです。

ゾロサン前提じゃなくったって、仲間に信用してないって言うか?と。

んで、理由づけをしてみました。

青雉と会う前に一晩あったことにしちゃってます。

青雉との後は、またちょっと別件で思うところがあるので。