サンジがふと目を覚まし、煙草を引き寄せる。
隣で久しぶりに穏やかな顔で眠るゾロを見やる。
そんなことで怒っていたのか、と思い出し、ほくそ笑んだ。
いつでも死ぬ覚悟はできていると言い放った誇り高いこの男が、
自分の怪我に動揺したのは、正直嬉しい。
しかし、見くびるな、とも思う。
信用しろ、おまえが簡単に死なないように、自分だって簡単には死なないんだ、と。
だから、敢えて怒鳴りつけた。
戦いの最中に、自分が横で死にかけてたら、助けに来るんじゃないか、と
考えたら心底ゾッとした。
人の夢を妨げるのは生涯一度で充分だ。
おまえの夢まで背負えねーよ。
おまえは誇り高い獣――枷をつけるな。おれを足枷にするな。
長くなっていた灰を落とそうと灰皿に手を伸ばすと、捻られた腰から激痛が走った。
久々なのに、船の中なのに、後先考えず貪るようなセックスをしてしまった。
捨てられる覚悟も必要だったか、と涙を流したのは今朝のことなのに、
打って変わって舞い上がっている自分に苦笑する。
セックスで抱かれているのは自分の方だが、自分が抱いている気分だと言ったら、
ゾロは笑うだろうか。
最初は屈辱を感じていた交わりが今では充足感を与えてくれる。
毛布で体を包み直してサンジが身を横たえると、
無意識のままのゾロがサンジの体を引き寄せる。
引き寄せられるまま、ゾロの体の上にのしかかるようにして
首筋に鼻先をくっつけて目を閉じる。
覚悟を決めたなんて嘘だ。
恋人を失っても平気な覚悟なんて決められる訳がない。
いくら想像しても慣れなかった。
でも、死線を超えるたび、
血まみれのゾロを見るたびに、
潤む目を前髪に隠し、
震える指先をポケットで握り、
わななく唇に煙草をくわえ、
ギュッと締まる喉に煙を吸い込めば、
笑い声で憎まれ口を叩けるほどにはなったから。
いつか、本当に笑えるようになるかもしれない。
そして、ずっと先のいつか、おまえが死んじまったら
おれは
泣くだろうか
壊れるだろうか
でも、その時には、ゾロ
騙す相手がいないんだから、
隠さなくて良いよな。
おまえは、
空の上から
なんだ、その様はって 笑えば良いさ。
fin
DBFのゾロのセリフにずっと違和感があったんです。
ゾロサン前提じゃなくったって、仲間に信用してないって言うか?と。
んで、理由づけをしてみました。
青雉と会う前に一晩あったことにしちゃってます。
青雉との後は、またちょっと別件で思うところがあるので。