空島での死闘を終え、おれ達は青海へと戻ってきた。
サンジとナミ、おれの間にはどうしようもないわだかまりが残ったままだ。
なし崩しに笑い合うには、でか過ぎる。
かと言って、じゃぁ、何を話せば良いんだ。
くだらねー話なら、いくらでも舌が回るのに、
ぐるぐると空回りして日が経ち、 さすがに怪我も治り始めている。
話題にするなら今しかねえ、と頭の整理がつかないまんま、
おれはラウンジへと足を向けた。
ラウンジではチョッパーがサンジの包帯を替えているらしく、声が漏れ聞こえてきた。
開けようとノブにかけた手が止まる。
「やっぱりヒキツれちゃってるね、もうしばらく薬塗って様子見るけど、
治らないようなら移植もできるから。」
「移植~?いらねーよ。
野郎の、しかも海賊の体に傷跡の一つや二つあったって、どうってこったねーだろうが。」
「仲間を守った傷は勲章?」
「守った傷ならそうかもな。
でも、こりゃぁなぁ~
守られたのはこっちだ。」
バタン!
おれは、思いがけない話題に居てもたっても居られず、勢いよくドアを開けた。
「おう、ウソップ。茶ぁなら、ちっと待ってろな。」
「いや・・・サンジ・・・
その守られたって・・・。」
「あ?
なんだよ、聞いてたのかよ。」
「わりぃ、でも、何だよ。お前はおれ達を庇ってそんなになったんじゃねぇか。」
「まぁ、そうだけどな。
あん時ゃ、もう雷落とす寸前だったろ!?
誰かが喰らわなきゃ、三人もろともだった。」
思い出すように、苦々しい顔でサンジが言う。
そうだった、あの時の雷は、誰かが喰らうか、全員で喰らうかの二択だった。
だからって、お前が平然と犠牲になるのはやっぱり嫌だったんだ。
助けられたおれの台詞じゃねーかもしんないけど。
返す言葉もなくて、思わず下を向く。
「でも、ウェーバーに乗ったナミさんとおめぇがいんだ。
おれが喰らって動けなくなったって、ぜってーチョッパーんとこに連れてってくれると思った。
当たりだろ?」
「そりゃ、当たり前だ。でも、そりゃおれだっておめぇらは助けてくれただろ?」
「んー
助けてーのはヤマヤマだけどな。
おりゃ、おめぇみてぇに引っ張りよせるなんてできねーもんよ。
遠くに蹴っ飛ばして、そこにチョッパーがいりゃラッキー、ってわけにゃいかねーだろ。」
ニヤリと笑うサンジを見て、ようやくおれの思い違いに気がついた。
「すごいな!! サンジ、ウソップのこと信頼してんだな!」
黙って聞いていたチョッパーが嬉しそうに言う。
「なんだ、そりゃ。こっぱずかしい言い方しやがって!!おめぇだって信頼してっぞ、ドクター。」
おれはてっきり、サンジの自己犠牲かと思って、ムシャクシャしてたんだ。
ポンポンと帽子を叩かれ、嬉しくねーぞーとクネクネ踊るチョッパーを
優しげに見ながらサンジが言葉を続ける。
「ま、適材適所ってやつだな。」
みんなで助かるためだったんだ。
おれができること、ナミができること、それを考えての行動だったんだ。
ウルッと来てしまった目にゴーグルをつけて、胸をはる。
「はっはっはっ
サンジくん、いつでも助けてやるから、遠慮なくキャプテンウソップの盾になりなさい!」
「バーロー 二度とごめんだ。」
ナミにも教えてやんなきゃ。あいつもぜってー誤解してる。