素直になれなくて 2

翌朝 ウソップの絶叫でメリー号の朝が始まった。

 

「サンジ!またちっこくなってるぞ!!」

 

今度のサンジは14歳だった。

楽観的に構えていたナミとロビンも、焦るチョッパーの手伝いを申し出、ラウンジにありとあらゆる本が積み上がった。

三人と、なぜかいるゾロに飲み物を用意しながら窓から甲板を窺うサンジ。

外からはルフィとウソップの歓声が聞こえる。

 

「サンジくん、こっちは気にしないで。遊んで来て良いのよ?」

「えぇ!アイツらと?いーよ、いーよ。おれはおねーさま方と一緒にいる方が幸せだぁ~♪」

「エロコック、チビんときからそれかよ。」

「うるせー!変態。てめぇにゃ関係ねーだろ!」

「ぷっ!今日も変態なんだ。」

「男性に服を脱がされたのが、よっぽど衝撃だったのね。」

「でもさ、あの二人。同じ年だし、ライバル的なものかと思ってたんだけど・・・こうなってくると、シンから嫌いなのかな、って思わない?本能が拒否してるというか・・・」

「生理的に受け付けない?」

「そう!それ!!」

 

ダン!とカップを置き、ゾロが出て行った。

 

「あら、悪かったかしら?」

「気にすることないさー!感じ悪ぃヤツだね~」

 

 

 

 

見張り台で沈む月を見る。

くっきりと黄色く輝いていた月は明け始めた空にぼんやりと浮かんでいる。

確かにあると思っていたものがぼやけていく。

 

夕食はウソップが釣り上げたスズキのムニエルとタコのカルパッチョだった。

常なら並ぶあら煮もたこ刺しも無かった。

サンジの得意分野が洋食なのは承知だし、和食を特に好むのはゾロだけだから、当たり前と言えば当たり前だが。

 

「早く元に戻れ。」

 

一人ごちて急激な不安に駆られる。

体力も落ちているのか、早々と寝たはずのサンジがまだ起きて来ない。

 

まさか、と思いつつ男部屋に降りたゾロが見たものは、そのまさかだった。

 

「チョッパー!起きろ。またコックが小さくなってるぞ!」

 

「えええーっ!」

 

9歳だと言うサンジはそれでもパンをこね、卵を焼いた。

ウソップ特製踏み台に飛び乗り、くるくると働いた。

「一体、どういうことなの!」

「おいおい!このまま小さくなり続けるなんてこたぁ、無いよなぁ?」

「そんな!小さくなり続けるって限度があるわよ!」

「卵になんのか!」

「なんねーよ!」

「あんたたち、うるさい!外行けー!」

「ほーい」

 

肩を叩きながら出て行くルフィとウソップをサンジが見送る。

「コックさん?あなたも一緒に行って良いのよ?私たちに任せて。」

「え?いいよ、いいよ!アイツら本当に年上?ガキくせーと思ってさ!」

「ふふ。昨日も思ったけど、お髭のないコックさん、かわいいわね。ちょっと触らせて。」ツルッと顎を撫でる。

「あら、すべすべ。」

「え!ちょっとサンジくん、私も。」

「きゃー!つるつる~!」

「羨ましいなんてレベルも超えるわね。」

頬を撫でられ、耳を引っ張られ、真っ赤な顔で立ち尽くす。

「アホか。」呟いてゾロが立ち上がる。

「うるせー!羨ましいからって邪魔すんじゃねーよ、変態!」

足を振り上げたサンジだが、届かず・・・転けた。

ハァッと肩を竦め、ゾロがドアを開けた。

「仕方ないよ!サンジ!急に大きさが変わったら、 感覚も狂うって!」

チョッパーが慰めるが、「てめぇに言われてもな・・・」サイズ自由自在なチョッパーに項垂れた。

「コックさん、こちらにお座りなさい。一緒にお茶を頂きましょう。」

ロビンとナミの間に座らされたサンジはしばらくしょんぼりと紅茶を啜っていた。

 

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