何かの始まり B-2

あれから何度となく体を重ねたが、サンジはイかない。

直接擦れば勃つし射精もするが、おれが入ってる間は萎えたままだ。

せめて前戯でヨくしてやりたいが、断固として拒まれる。

それでも誘い自体を拒まないのは、惚れられてる証拠のようで嬉しいんだが・・・。

 

島に降りるたび、酒場ではベテランっぽい娼婦から話を聞き、

でかい町で専門店があれば店主に話を聞いたり、

勧められるままに潤滑油等を買ったりもした。

そんな努力の甲斐もなく、いつまでも恋人をヨくしてやれない。

自己嫌悪になりそうだ。あれ以来あいつは笑わない。

 

 

 

 

 

 

あれから何度となく体を重ねた。

おれが本命じゃないことも、あいつが島につく度、夜の町へ消えていくことも

分かっているのに、おれはゾロを拒めない。

仲間も増えたし、船まで新しくなったってのに、おれたちの関係は変わらない。

今夜もオツトメを果たしたおれは、そのまま寝る体制のゾロを置いて、倉庫を這い出した。

男部屋に向かおうとしてキッチンの灯りを見咎め、方向転換する。

ドアを開けると、先ほど見張り台で差し入れを渡したフランキーだった。

「よぉっ、グルマユ!どうした?」

「いや、おまえこそ・・・あ、わりぃ。コーラ足りなかったか?」

「いや~ハンバーガーが美味くてよ!つい飲み過ぎちまった。

 おめぇ、今日は剣士のにいちゃんとしっぽりじゃなかったんか?

 大したこっちゃねぇから戻っていいぞ。悪かったな。」

「な、え、なんで、しっぽりって、え!いつ!?」

「おいおい、落ち着けよ。コーラ飲むか?」

差し出されたコーラを瓶のままグイッと煽る。

「なんで、いつから知ってる?か?」

おそるおそる頷く。

一応知られないように行動してたつもりなんだ。

「いつっつうと、あれだな。海列車。」

「は?」

「電電虫に剣士のにいちゃん出たろ?あん時よ~おめぇさん、なんとも言えねぇ

 良い顔で笑ってたんだぜ。気づいてねぇんだろ。」

「そんな・・・。」

かぶりを振るが、フランキーは気にも止めない。

「アクアラグナん中の、更に敵陣の真っ只中だってのによ、

 おめぇが居んのは、お花畑かって位ぇだったぜ。」

参った。

「最初っからってことかよ。」

「おぅ、そういうこったな。

 剣士のにいちゃん見た時は、こいつがおめぇの恋人か~って思ったぜ。

 ま、おれは偏見とか無ぇからよ、気にすんな。」

祝福するように言われるのが堪える。胸が締め付けられるように痛い。

「ありがとう。けどな、恋人ってわけじゃ無ぇんだ、これが。」

「そうなのか?」

これじゃ、愚痴だ、と思うのに止められない。

「ゾロには好きな人がいる。藻類のくせに生意気だろ?」

タバコをくわえながら、せめて平静を装ったつもりだが、失敗したらしい。

ポンポンと頭を叩かれる。

子どもをあやすような仕草がむかつくことに心地良い。

「なのに、おめぇとやってんのか。

 意外だな。そういうヤツにゃ見えねーのに。

 もっと、なんつーか仲間を大事にするヤツだと・・・」

うん、そうだ。仲間だけじゃねぇ、あいつは優しくて、懐の深い男なんだ。ってことは・・・

「おれは、仲間とすら思われてねーのか・・・」

さすがにそこまでは思ってなかったおれは愕然と呟いた。

「おいおい、やめとけ。

 夜中ってのはマイナス思考になるもんだ。

 思い込みで悩んだってロクなことにならねーぜ。悩むのは確認してからにして、もう寝とけ。」

まだ長いタバコを捻り潰す。確認?できるわけ無いだろう。

 

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