絡み合ったまま、ベッドにもつれ込む。
コックの服は貞操帯かと言いたくなるほどの難関だった。
ネクタイは引っ張ると余計絞まりやがるし、ボタンは小さくて多いし、
キスしながらでは到底脱がせられなかったが、見かねたのか
慣れてるのか、おれを誘導するような動きでするすると脱いでいった。
そりゃ、脱がされるより脱ぐ方が慣れてて当たり前か。
こいつのキスは上手い。
ボーッとしそうになり、慌てて動く。
そりゃそうだよな。
ナミとのやり取りだけ見てると、良いように使われてるとしか思えねぇけど
あんだけマメに尽くすんだ、惚れる女もいるだろう。
「なぁ、てめぇはなんでおれに抱かれる気になったんだ?」
あ、固まった。
やべぇ。
また、マズイこと言ったか?と思ったら吹き出しやがった。
「なんて、顔してやがる。」
両頬を引っ張られる。
「おれはもう、言った。気になるんなら、死ぬ気で思い出しやがれ。」
惚れ直す笑顔で言われた。
くそ!すげぇもったいないもんを忘れてるみてぇだ!
「もう一回言えよ。」
耳の付け根を吸いながら、言うとびくんと頭をのけぞらせて小さな声が上がる。
「イヤだね。おれは誤解を招くようなこと言ってねぇぜ。
だから、わかれよ。見てわかんだろ?」
そうか、だから隠さないのか。
多分、こいつはすげぇ恥ずかしいんだろう。
さっきから何度も手が顔を覆うように動いては、シーツを掴んだり
掴んだシーツを身体に引き寄せては戻している。
隠そうとしては、意を決して曝している、その様子はおれに伝えるためか。
どこを触っても、舐めても感じる敏感な肢体は、いやらしくくねる。
舐めて尖った胸の飾りはてらてらと反射している。
どす黒く変色し始めた腰の痣に触れたとき、竦んだ身体は痛みではなく快感を追ったようだった。
敏感な反応にすっかり気をよくしたおれは不用意に奥まった個所に手を伸ばして、コックの内股がギクンと強張った。
しまった。このために色街に行ったようなものなのに。
脇に脱ぎ捨てた腹巻から目当てのものを取出す。
手の中のものを確認し、コックをひっくり返す。
驚きの声を上げているが、てめぇのためだ。
ボトルの口を開け、ノズル状になっている先端をコックの後孔に宛がう。
「ひっ」
「動くな」
「やだやだやだ、冷たい!気持ち悪ぃ!」
じゅぶじゅぶじゅぶ・・・と中に潤滑油を注ぎこみ、次は、と手元に目をやる。
カサリと音が立った瞬間、四つんばいにさせていたはずのコックの足が脇腹にめり込んだ。
「何、見てやがる。」
奪われた手の中の紙は、色街で「ケツでのやり方に詳しいヤツ」を紹介してもらったら、
わらわら出てきて、「男とやったら相手が腰を痛めたから勉強に来た」ことまで白状させられ
散々っぱらからかわれ、ボラレてるんじゃないか、と思いながら「おススメ」を買って
手に入れた「指南書」だった。
「その香水臭は、そのレディ達か・・・」
「レディか?男でもドレス着てたら。」
「げっ、そりゃオカマじゃねぇか!」
そんなんどうでもいい。
すっかり平然と向かい合って座っているが、おれのはもうはち切れそうだし
コックのだって先走りを垂らしてプルプル震えている。
ケツの下に滲み出ているのはさっきの油だろうが、そんなシミにまで煽られる。
「てめぇに痛い思いをさせたくなかったんだよ。」
「だから、おれを見ろって。
なぁ、てめぇが抱いてんのはおれだろ?
てめぇがおれ見ていろいろしてくれてっとき、おれ、ちゃんと感じてたろ?
紙睨んで、放ったらかしにすんなよ。」
もう一回キスからやり直した。