Attention Please

わくわく、そんな音を全身から醸し出しながらサンジが室内を物色している。

ライトの色が変わるボタンを押し、わかりやすい玩具から用途不明なものまで並ぶ自動販売機を眺め、備え付けられたアメニティすら物珍しげに手に取っている。

初めてのラブホテルでヘロヘロにした翌朝、全然探検していない、と怒り狂うサンジを宥めるのは骨が折れた。

バイト料出たらリベンジ、と約束したら、それまでHしない、と言い渡されてから2週間。もう我慢の限界だ。

この探検を邪魔したら、お預けが延びるのは火を見るより明らかで………。

この2週間、おかずにし続けたサンジの痴態が浮かび、ムスコに血が集まる。

まだ目の前でヒヨヒヨやってりゃ、眺めて楽しめるが、あいつは風呂場の探検に行ったきり帰ってこない。

おれはテーブルのリモコンを取ってベッドに乗り上がり、テレビのスイッチを入れた。

途端に響く派手な女の喘ぎ声。

 

 

萎えた

 

ちょっと前まで女を抱いていたんだが、サンジが手に入ったら、これか。

 

我ながら、正直なムスコだ。

 

「こら!今日はおれが探検する日だぞ!てめぇがやんなよ!」

風呂場から飛び出してきたサンジがおれの手からリモコンを奪い取り、横になったままのおれの脇に腰を下ろしてチャンネルを変え始める。

今日「は」おれがって……俺の日はいらねーから。

 

ラブホなんだから、やらしい番組がデフォルトだ。変えても変えても写る女の裸に赤面するサンジの赤い項にかかる金髪を引っ張りながら声をかけた。

「探検は終わったのか?」

「あとはテレビだ。カラオケとかゲームとかできるって言ってたじゃねえか。」

「ああ、できっだろ。入口にも書いてあったし。」

テレビの入力元を切り替えるだけなのだが、機械音痴のこいつにはわからないだろう。ここでゲームまでされちゃぁ適わないので、教えてやらない。プレステは、うちでやれ。

「なんだよ、AVばっかりじゃねぇか。」

チャンネルをいじり続けていたサンジが、ようやく着衣の女が出てきたタイトル画面でホッと手を止めた。

「気が済んだか?」

「ん~、まぁまぁ?なに?マリモは何がしたいわけ?」

 

―この野郎、さんざん人を待たせておいてそういうことを言いやがるか。

 

「ゲームしようぜ。」

「は?え?ゲーム?」

にやにやと挑発的に笑っていた顔が、きょとんとあどけない顔に変わる。

「おう、テレビの真似しろよ。」

「なんだ、それ?ごっこ遊び?幼稚だなぁ!仕方ねぇ、つきあってやっか。」

バカにした口調で、テレビ画面では着衣の女がインタビューを受けているのを確認し、承諾した。

アダルトチャンネルじゃないと判断したんだろう。

 

『…マリエちゃんは何歳?』

『16歳です。』

「ほら、サンジくんは何歳だよ。」

「はははっ、てめぇ雑!15歳でぇっす。」

 

『彼氏はいる?』

『えー、いません。』

「いません!」

「てめぇ!!なんかんときにそうやって答えたら殺すぞ!」

『ホントに?』

「ほら、聞かれた。」

『こないだ分かれちゃったから、ホントですよ~』

「…います。」

ムスッと唇を尖らし、渋々答える可愛くない口をムニュと摘んでやる。

 

『じゃ、最近エッチできなくて寂しいでしょ。オナニーは週に何日?』

「は!?ナニ、この質問!!」

頬に朱を上らせ、うろたえている。

そろそろ、気づいたか。

『ん~、だいたい毎日、かな。』

「おれ、しねーよ!!してねーよ!」

『毎日?まりえちゃんエッチなこと好きなんだ~。

どんな風にしてるの?』

『んっと、でっぱってるとこを擦ったりぃ、くるくるって撫でるのぉ。』

答えるのも、反論するのも忘れて、画面に見入る男の股間は、はっきりと兆していて面白くない。

『でっぱってるのってここ?』

服の上から女が胸を揉まれているのに連動して、サンジのそれを揉みしだく。

『あん、そこじゃなぁい』

嘘くさい女の声より、声を出さないよう我慢している鼻にかかった熱い吐息を漏らすこいつの方がよっぽど色っぽい。

 

ペロンと女がスカートを捲られたのを受けて、サンジのベルトをカチャカチャと外してやる。

 

「ちょ、そこまでやんのかよ。わ、ばか、ばか、ヘンタイ!」

サンジの抵抗に苦戦しながらズボンをひっぺがす。

スカートは楽でいいよな、と画面を見ると『パンツの上からじゃ、よく分からないなぁ。脱いじゃおうか。』と先に進んでいる。

 

サンジのトランクスに手を這わすと、中央の合せからピコンと性器を取り出した。

よし、追い付いた。

 

『そこをどうするんだっけ?』

『先っぽを…んっ…くりくりって、ああんっ!』

サンジの手を取り、そこに導く。

上体だけ振り返り、おれの胸に顔を押しつけると、ゆるゆると輪っかにした指を上下させた。

 

『上手に出来たね、ご褒美だよ。好きな箱を選んで。』

箱なんざ無ぇから、自販機で代用しよう。

画面の箱からは、ゴツゴツと突起のついたぶっといバイブが現れていた。

 

自販機に金を入れ、抱えたサンジの手と同時に全部のボタンを押す。

本当は大して金額を入れてないから、そんなにすげーのは出ないんだが、さっきじっくり眺めたサンジの脳裏にはどんなんが浮かんでいるんだろう、テレビで女が突っ込まれているようなモノだろうか。

ひどく不安な顔をしている。

 

「お、当たりだな。」

軽く言ってやるとサンジの顔がパッと明るくなる。

出てきたのは細身のアナル用バイブで。

ごついのを見た後だけに、これならいいような気になっているらしい。

 

うるさいテレビはとっくに消して、室内に響くのは淫靡な水音と、小さなサンジの声、そして、モーター音。

 

くぅっ…はっン…ゾロ…ゾロォッ……あああ!

ずっと瞑っていた眼がぱっと開き、瞼が再び落ちていく。

何度見ても、このときのサンジの顔は堪らない。

着たままだった衣服を寛げ、白い身体に覆いかぶさるが、ぐんにゃりとした身体は一向に動かない。

 

ん?

 

接吻け、舌を絡めても答えて来ない。

 

鎖骨から胸へと撫でおろしても、無反応。

 

「おい!サンジ!サンジ!!」

 

答えてくるのは、安らかな寝息だけ…………

 

しまった、やり過ぎた、と反省しても後の祭りで…おれのムスコはお預け決定なんだろう。

 

Fin

 

 

大好きなfetishの芳賀ひかる様、サイトお誕生日おめでとうございます。

5周年の記念すべきプレゼントがアホイロモノですみません!

ご笑納くださって嬉しいです♪